madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

madajimaの海外 香港編 その3 - 仕事場

香港に着いて二日目、月曜日となりました。

ホテルで朝食をとり、スーツに着替え、ホテルを出て、Google Mapsを開き、オフィスに向かって歩いていきました。

そして、迷いました。

人が多いからか、Google Mapsが示す現在地がよく定まりません。

また、車通りが多い道路の下にある地下通路の仕組みがよく分からなく、何度も行ったり来たりしました。

それに、「Google Mapsを見ればなんとかなるだろう」と思っていたので、香港支社が入っているオフィスビルの見た目を知りませんでした。

知っているのは、そのビルの60階にオフィスがある、ということだけです。

なので、Google Mapsが示すビルの場所の方角に向かってなんとなく歩くしかありませんでした。

その方向に向かっていると、人型というか、人間の脚と胴体だけみたいな建物がありました。

方向が一緒だったので、それかな、と思いましたが、窓の感じからして、マンションにしか見えません。

造りからして新しそうでしたが、「あそこにオフィスが入っていたら嫌だな」と思うくらい、不気味な形のビルでした。

あの不気味な感じで、機動戦士ガンダムに出てくるジオン軍モビルスーツビグザムを思い出しました。

日本と違って、ユニークな見た目の建物が多いのは良いとして、何もビグザムにしなくてもいいのではないか、と思いました。


そのビグザムの脇の公園を通ると、やたら大きなビルが現れました。

細くまっすぐ空に向かって伸びている、ごく普通の見た目のビルです。

ただただ高いだけです。

これは、まさしく、オフィスビルにしか見えません。

60階も余裕でありそうです。

これだろうな、これしかないな、と思いました。

入り口を見つけてビルの中に入り、「オフィス・エントランス」みたいな標識を頼りに、歩みを進めました。

すると、スーツ姿の人たちがバシバシ歩いている列みたいなのと合流しました。

間違いなく、自分は正しいルートに沿っています。

よかった、とホッとしました。

この時、すでに、出勤時間の9時になる数分前です。

なんとか間に合うでしょう。


オフィスが入っているのは60階だったので、受付階から52階まで直接上がるシャトル・エレベーターに乗ろうとしました。

そのエレベーターの近くには女性がいて、「このエレベーターに乗ってください」的な指示と、人が乗るまでドアを開けておく仕事をしていました。

エレベーターが来てドアが開くと、その女性が「@#」と短い言葉を発し、軽く頷いて会釈みたいなのをしました。

「どうぞ」的な感じなんでしょう。

日本だったら、「いってらっしゃいませ」的なことをゆっくり言って、腰が直角になるくらいまで頭を下げるのでしょうが、ここでは「@#」と短く言って、3センチくらい頭を下げるくらいでした。


52階くらいまで行くと、大きな窓ガラスから、高層ビルが連なっている景色が大きく広がっていました。

52階なんて、六本木ヒルズの屋内展望台と同じ高さです。

オフィスに行くまで、ここよりもさらに上がる訳です。

地震が無いってすげえなぁ、と感心しましたが、それをじっと見ているのも恥ずかしいため、そそくさと60階まで行くエレベーターに乗り継ごうとしました。

すると、標識を示す先に、電車の改札のようなゲートがありました。

僕の前を行く人たちは、それこそ改札のように、何かカードみたいなものをスキャンさせてゲートを通っていました。

まずいです。

僕は、そのようなカードをもらっていません。

困りました。

時間がないので、僕は少し焦りながら、そのゲートの近くに立っていた細くて若い男性のところに歩み寄り、「カードはどこでもらえますか」と聞きました。

その男性は話しかけられることに慣れてないからか、少し驚きながらも「受付階でもらってください」と言われました。

受付階?

この52階から、また下まで降りるの?

が、どうもこうも行ってられません。

急がなければ、もっと遅刻してしまいます。

僕はすぐに受付階まで降り、カウンター的なところに行って、メガネの女性に話しかけました。

「XX会社に訪問するんですが、カードをもらえますか」

「分かりました。それでは、この用紙を埋めてください」

「はい・・・終わりました」

「それでは、IDをお見せください」

「ID?」

「身分を証明するものです」

「いや、僕は、XX会社の日本のオフィスの者で、厳密には訪問者ではなく・・・」

「IDが無ければ、どうやってあなただと証明するんですか?」

メガネの女性はかなり苛立った声を出しました。

僕は、「え、そんなに苛立つ?」と思って、少し笑ってしまい、それを隠すように、リュックの中からパスポートを探しました。

「・・・はい、確認しました。それでは、こちらがカードです」

「ありがとうございます」

再び急いでエレベーターに向かい、その時に時計を見たら、すでに9時15分ほどになっていました。

ああ、これはこれは。

初日から遅刻とは。

でも、まあ、しょうがないか。

オフィスの入り方が分からなかったんだから。

しょうがない、しょうがない。


シャトル・エレベーターまで行き、女性に「@#」と再び言われて乗り込みました。

52階まで上って、改札ゲートまで来て、先ほどもらったカードをSUICAのようにピッとすると、ウィーンとゲートが開きました。

ホッとして改札を通り、エレベーターが降りてくるのを待っていると、先ほどカードについて聞いた、ゲートの近くに立つ若い男性に、「ここにカードを当てて」と言って、エレベーターの前にあるカードスキャナーみたいなものを指差しました。

何でそんなことをするか意味が分かりませんでしたが、そこにカードを当てると、小さな画面に「F」と表示されました。

若い男性は、エレベーターのある方向に指を差しました。

よく見たら、小さなエレベーター一つ一つにアルファベットが振ってあり、「Fのエレベーターに行け」という意味なのだと分かりました。

何でわざわざエレベーターを指定されなきゃいけないのか分かりませんでしたが、言われた通りにそこに行き、ドアが開くのを待ちました。

すると、「madajima?」と後ろから声がしました。

ビックリして後ろを見ると、ショーンが立っていました。

オーストラリアで仲良くなった、日本大好きっ子の、あのショーンです。

なんという偶然でしょう。

「ああ、ショーン」と僕は喜んで、すぐに握手をしました。

「また会えて嬉しいよ」と言いました。

本音です。

香港行きが決まってから、ショーンに再び会えるのを楽しみにしていました。

が、すぐに思いました。

ショーンも遅刻?

たまたま?

15分も遅いけど?

もう9時15分だけど?

が、なんとなく聞きづらいため困っていると、「フライトはどうだった?」とショーンが聞いてきました。

「ああ、4時間だけだから、大したことなかったよ」

「いつ着いたの?」

「昨日の夕方、5時くらい」

「何したの?」

「ご飯食べたり、港から夜景を見たり、ブラブラしたり」

すると、Fのエレベーターがやって来たようで、ドアが開きました。

僕が先頭だったため、エレベーターに入って、すぐに60階のボタンを押そうとしました。

そして、焦りました。

ボタンが無いのです。

ドアの横にも、壁にも、どこにもありません。

ただ、ドアの横の上の方に、「54 58 60」というように、数字が赤く表示されています。

「60」とあるので、60階に停まるのかと思いましたが、定かではありません。

僕はヒソヒソ声で、「これ、ボタン無いの?」とショーンに聞きました。

「え?」と、僕の聞いていることが分からなかったようですが、僕の質問の意図をすぐに読み取ったようでした。

「エレベーターの前にある機械にカードをかざすと、どのエレベーターに乗るか教えてくれるんだよ」と説明しました。「だから、自分で階を選択しないんだよ」

ええええ!

エレベーターの中じゃなかったら、叫んでしまうくらい驚きました。

何、そのシステム。

エレベーターでボタン押さなくていいって、とんだ未来だな。

これは、初めてSUICAを使って自動販売機でジュースを買った時の衝撃に似ています。

あの時も、「先にジュースを選ぶの? マジで?」と驚き、教えてくれた友達に笑われていました。


エレベーターは60階に着き、ショーンとオフィスの方まで一緒に歩きました。

ここで、あの疑問をぶつけることにしました。

「受付階でカードもらうのに時間かかっちゃって遅れちゃってるけど、大丈夫かな」と、やんわりと聞いてみました。

すると、ショーンは、ハハッと鼻で笑い「ここは、9時半まで全員来ないよ」と言いました。

「日本じゃないんだから、みんな時間通りに来ないよ」

ここでも、エレベーターのシステムを聞いた時と同じくらいの衝撃を受けました。

どういうこと?

9時半まで全員集まらないって、何?

「ちょっと待って、じゃあ9時半に来て、6時半に帰るってこと?」

「いや、6時」

「いやいや、契約上8時間働くことになっているんじゃないの?」

「まあそうだけど、誰も気にしないよ。どこの会社でも同じ」

緩いなあ〜。

香港、緩いなあ〜。

「多分、香港の人は、日本の会社では働けないと思う」とショーンが言います。

「はは、そんな感じだね。でも、逆に、日本人も香港では大変そう」と僕は返しました。


オフィスに入ると、たしかにデスクは半分ほどしか埋まっていませんでした。

また、挨拶しようと思っていた、アジアのファイナンス部門のトップも、まだ出勤していないようです。

なんという世界、香港。

自分が持っていた常識が、ことごとく覆されていくのを感じました。

 

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↑香港のビグザム

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ガンダムビグザム