madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

madajimaの海外 香港編 その2 - 一日目

タクシーを見送ると、ドアマンに「チェックインカウンターは、ショッピングモールを抜けた右です」と言われました。

黒い壁の部屋は、ただの車寄せのようでした。

「ありがとう」と行って、ショッピングモールを抜けて、右に行きました。

歩いている途中、「チェックインカウンターへの行き方は随分丁寧な案内だな。『あちら』だけじゃないんだな」と笑いました。

きっと、チェックインカウンターへの行き方は何度も説明していて、ATMへの行き方は説明したことがなかったのでしょう。


カウンターに行って、若い女性のいるところでパスポートを渡しました。

この女性、やたら笑顔です。

僕に会えたことがめちゃくちゃ嬉しそうな表情をしています。

さすが五つ星だなあ、と思いました。

日本では、笑顔の対応はどこでも当たり前で、笑顔対応じゃないとむしろ若干イラッとします。

が、海外では、笑顔対応されるとやけに感動してしまいます。

彼女は、真剣な顔でパスポートの名前を照合した後、「ミスターのチェックインは14階になります」と言いました。

意味が分からなく、「へ?」みたいな顔をしていると、「ミスターのためのチェックインカウンターが、14階にあるんですよ」みたいなことを笑顔で言われました。

さらに目が点になってしまいましたが、エレベーターに乗るためのカードキーを渡され、ひとまず14階に上がりました。


14階に着くと、カウンターっぽいところがありました。

このカウンターでは、スタッフは立っておらず、座っていました。

「あの・・・」と詰まっていると、「チェックインですか?」とニコリとされました。

背が低いアジア系の女性で、ベテラン味がありました。

「はい」

「腰をおかけください」

スーツケースを横に置いて座ると、目の前には日本語の用紙がありました。

ええええ!

なにこれええ!!

カウンターの女性は英語の紙を持っており、英語で説明をしました。

「ブレックファストは、こちらのビジネスラウンジでお召し上がれます」と行って、右手をひらりとしました。

その右手の方を見ると、太ったおっさんがカクテルグラスを片手に、女性コンシェルジュ数人と歓談をしていました。

「ディナータイムには有料でドリンクもお召し上がれます」と続けます。

なんだよ・・・。

なんだよこの待遇・・・。

こええよ・・・。

「その他のサービスに関しては、お手元の用紙をご覧ください」と言いました。

日本人だから、日本語の用紙を手配しておくとか・・・。

なんだよ、この差・・・。

オーストラリアの五つ星とはえらい違いだよ・・・。

朝飯の場所説明してくれるし、ドリンクも出してくれるし、日本語の用紙も、俺のために用意してくれてんじゃん・・・。

半端ねえ・・・。

「何か、ご質問はございますか」

「あ、特に」

「何かありましたら、いつでもお知らせください」

「ありがとうございます」

少し驚いたまま、言われた部屋に向かいました。部屋は同じ14階です。

ガチャリ、と部屋に入ると、綺麗なベッドが目に入りました。

おおお!

綺麗!

すげえ!

部屋はちょっと狭い!

風呂広い!

窓から、さっきの交差点が見える!

あの交差点に行きたい!

スーツケースからスーツを出してクローゼットにかけ、必要な荷物を持ってすぐに外に出ようと思いました。

が、喉が渇いたので、部屋に置いてある、ミネラルウォーターのペットボトルを手に取りました。

そのフタを開けようとした瞬間、「いや、待てよ」と気付きました。

これ、無料なのか?

この水、飲んだ分だけ後で金を取られるのか?

僕は不安になったので、そのペットボトルを手に持って、先ほどのカウンターに行きました。

先ほど対応してくれた女性コンシェルジュがいたので、「すいません、この水、無料ですか?」と聞きました。

すると彼女は、少し笑みを浮かべ、「そうです」と答え、続けて、「冷蔵庫に入っている飲み物も、無料ですよ」

「おお! すげえ!」と言いたいのをこらえ、「そうなんですね、ありがとうございます」とだけ言いました。

そこを離れ、エレベーターに乗って下に向かうとき、鏡に自分の顔が映りました。

めちゃくちゃ笑顔でした。

めちゃくちゃ嬉しそうな表情をしていました。

「ハハハハハ!」と、笑ってしまいました。

いや、もう笑うしかありませんでした。

何、この待遇。

ビジネスラウンジ、って。

ホテルのビジネスクラス的なやつか。

俺、こんなの、いいんですけど。

大丈夫なんですけど。

私なんかがこのような待遇、とてもとてもありえないんですけどもけども。

笑顔のままエレベーターを降り、駆け出すように外へと行きました。


やっべ。

ホテルの待遇が良い、ってだけじゃない。

ホテルのチェックインという、今日最後のタスクを終了したんだ。

自由だわ。

今日これ以降、自由だわ。

楽しー!


さて、まずは夕飯です。

僕は先ほどの交差点を渡り、夕飯探しに出かけました。

香港は、もう何でも美味しいらしいです。

会社の香港大好きな後輩、香子ちゃんも、香港に行く理由は「ご飯」だそうです。

美味しいご飯のためにわざわざ海外行くなんてどういうこった、と思いましたが、そんだけ美味しいということでしょう。

なので、適当に店に入れば、もう最高の夕飯が待っている、というわけです。

と、いうことで、適当に近くの建物の中に入りました。

入ってみると、地下の階がフードコートみたいになっていました。

人がガヤガヤしていますが、空席もあります。

もう面倒なので、ここで夕飯にすることにしました。


歩いて店を順番に見ていくと、日本料理やら、ベトナム料理やら、韓国料理やらが並んでいます。

どうせなら香港でしか食べられないものを食べたかったので、香港でしか食べられなさそうな、トマトの鍋パスタみたいなところで並びました。

「トマト+麺」となると、東京にある僕の好きなチェーン店「太陽のトマト麺」みたいなのを想像して、ヘルシーで美味しそうだな、と思いました。

もうお腹が減っていたので、選ぶ気力もなく、一番量が多そうなものを選びました。

絵を見ると、色々具が入っていて美味しそうです。

金額はよく分かりませんでしたが、どうでもよかったです。

空腹の方がずっと優先です。

会計を済まし、日本のフードコートでもよくある装置を渡されました。

料理の準備ができ次第、ブーブーと鳴るやつです。

それを持って、静かそうなところで席を確保するとすぐに、ブーブーと鳴りました。

荷物を席に置いたままカウンターへと向かい、ブーブーと交換に、トレイに乗った鍋型の皿をもらいました。

トマトが丸ごと載ったりしています。

短いパスタが中に入っています。

全然、太陽のトマト麺っぽくはありません。

スープは薄そうで、具も生っぽいです。

まあ、でも、見た目が悪くて味が良い、なんてことは往々にしてあります。

こぼしそうになりながらなんとか席に戻り、食べ始めました。

まずは、スプーンでスープをズルル。

ズルル。

・・・。

えっ・・・。

なにこれ・・・。

水にトマト入れただけで、全然味が無いじゃん。

見た目通り、味が薄い。

・・・嫌な予感がしてきた。

次は、この短いパスタを食べてみよう。

・・・。

うっわ、これも全然味が無い。

何も練り込まれていない。

なんだ、これ・・・。

クオリティ、低っ・・・。

俺が作ったみたいじゃん・・・。

俺が太陽のトマト麺を真似ようと思って、家で作ってみたみたいじゃん。

よくこれで店を出そうと思ったな・・・。

日本じゃあ、3日で閉店になるわ・・・。

香港、何でも美味しいって・・・。

香子ちゃん・・・。

何でもは嘘だわ・・・。


一番量が多そうなものを頼んだ自分を呪いつつも、腹が減っていたので、僕は気合で全部平らげました。

自分で作った料理がものすごくまずく、でも食べ切らなくてはならなかった、あの時と同じ気分になりました。

腹が、物足りなさを感じています。

楽しいと思われた香港の一日目が、あっという間に暗転しました。

輝かしいビジネスラウンジから、一気に暗闇に落とされました。

ただ、このまま終わらせる訳にはいきません。

どこかで、口直しをする必要があります。

そうでなければ、良い睡眠を取って、明日の仕事に繋げられません。


同じフードコートを、再び歩き回りました。

口直しをすると言っても、やはり、香港でしか食べられないものを食べたいです。

北海道料理店とかありましたが、NGです。

すると、中華まんの入れ物が積んである店を見つけました。

もう、中華料理で良いかな、と思いました。

中華料理なら、十分クオリティが高いはずだ、と。

なんせ、香港も一応中国の一部な訳だから。

あのタクシーの運転手のように、中国本土から来ている人もいる訳だから。

なので、肉まんらしきものを何個か頼みました。

お会計を済ますと、すぐに中華まんの入れ物が出てきました。

どうやらもうすでに作られているようです。

近くの席まで持って行き、食べ始めました。

・・・。

あんましだな・・・。

特別、うまいわけではない・・・。

横浜の中華街で食べた肉まんの方がずっとおいしかった・・・。

部活帰りに食べたセブンイレブンの肉まんの方がおいしかった・・・。

なんだよ・・・。

香港、なんだよ・・・。


気を取り直して、僕は夜景を楽しむことにしました。

あの、海の方まで行けば、例の100万ドルの夜景を見ることができるのだろう、と思い、海がある方向まで、テクテク歩いて行きました。

人がいっぱいいて、得体の知れない言葉を喋っています。

すると、その途中、「重慶大厦」とおっきく書かれた、巨大なビルがありました。

つい、足を止めてしまいました。

巨大なコンクリートの塊に窓が開けられたようで、見た目がエグいです 。

古臭さもそうですが、「悪のアジト」感がものすごく、やたら目が離せませんでした。

エアコンの室外機が不規則にくっついており、今にも落ちてきそうです。

何だかどこかで見たことがあるような、変な既視感がありました。

なんだろう、なんだろう、どこで見たんだろう、と考えましたが、思い出せません。

ちょっと入ってみようかな、と思いましたが、この時は恐怖の方が勝ち、やめました。

そして、僕は歩き続けました。


大きな道路を多くの観光客と渡って、海岸沿いに着きました。

すると、そこには、カラフルな夜景が広がっていました。

九龍半島から海を挟んだ香港島の高層ビル群です。

一緒に道路を渡った観光客が、それを見るなり「Ohhhh!」と喜んでいました。

僕も、「おお、これが例の」と感嘆しました。

これが例の100万ドルの夜景か、と。

色んな形のビルが、色んな方法で光を空と海に映し出しています。

色も、緑だったりピンクだったり青だったり、様々な色を使っています。

また、会社の名前を出したりして、必死に宣伝しています。

照明を出すだけじゃなくて、光が動いたりしています。

会社のロゴが横に縦に動いています。


飽きました。

1分くらいで飽きました。

人が多いのも嫌ですが、なんだかこの夜景にあまりにビジネスっぽい臭いがして、嫌になりました。

なんだか、自分のビルが、自分のロゴが出来るだけ目立つように、と、競い合っているような感覚がしました。

圧がスゴい、っていうんですかね。

化粧が濃い女性の顔みたいな、自分をできるだけ綺麗に見せようとして、逆にそれが見る側にとって困る、みたいな、そういう感じです。

夜景って、もっと自然な感じで良いんですよね。

日曜日なんだし、ちょっとビルに明かりがついているくらいで、「ああ、まだ働いているんだ」みたいにしんみりする、みたいな。

でも、完全にこれは広告です。

100種類のTV広告を、全部同じ画面で見ている感覚です。

疲れました。

僕は歩き続けました。


香港島を向いて左の方にしばらく歩くと、階段を登って夜景を見る場所が現れました。

そこは、人も少なく静かで、真正面に見える香港島の高層ビルも、そこまでうるさい見た目ではありませんでした。

なんとなく、さらに左の方を見ると、白色の照明がポツポツとうっすら見えます。

よく見たら、それは全て高層マンションでした。

白い照明の位置から察するに、同じ高さの同じ形のマンションが、ズラズラズラと並んでいます。

僕はそこで、「Ohhh!」と声を出しました。

すっげ、あんなに同じ形の高層マンションがズラズラと。

すっげ。

すっげ。

やっぱり、夜景というのは、自然じゃないと。

綺麗に見せようとして頑張ると、逆に綺麗じゃなくなるんですよ。

ビルはビルらしく、静かに立っていれば良いんですよ。

ビルはビルなりに自然でいてくれたら、それが一番綺麗なんですよ。

ま、人間もそうだし。

人間もビルも、同じですね。


僕は、あの左側の高層マンションのニョキニョキ具合を、必死に写真に収めようとしました。

「これぞ香港、これぞ香港」と口から出てきそうでした。

が、遠すぎるのか、あるいは僕のスマートフォンの性能が十分じゃないのか、なかなかうまくいきません。

次に、右側のカラフル具合と左側のモノクロ具合の対比を、ビデオに収めようとしました。

夜景は見せようとするんじゃねえよ、見た目を意識しない、自然なのがベストなんだよ、というメッセージを、誰かに伝えたくなりました。

が、夜景を一切見ずに、ずっと海側の柵に寄りかかって電話をしているインド人がいて、彼の頭と彼の声が入ってビデオに入ってきて、よろしくありません。

結局、あの高層マンションの夜景の感動を、スマートフォンに取っておくことはできませんでした。

ま、でも、と思いました。

ま、でも、人間の魅力も、決してスマートフォンに取っておくことはできないし。

人間もビルも、同じだな。

僕はそう納得してその場所を後にし、ホテルに戻って、一日目が終わりました。

 

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