madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

madajimaの海外 シドニー編 その7 - バースデー

会議は水曜日まで続き、無事に終了しました。

そして、ホリデータイムです。

木、金、土、日とシドニーを観光し、月曜日の夜に日本に帰国する予定です。

木曜日は、薄暗い曇り空の中、シドニーの街中を探検して終わりました。

そして、金曜日になりました。

この日は、電車で片道2時間かけて、ブルーマウンテンという場所に行く予定でした。

例のボンダイビーチをオススメしてくれた友だちが、このブルーマウンテンも「景色が美しいよ」とオススメしてくれたので、1日かけて行こうと思いました。


シドニーに来てからあまり天気には恵まれていませんでしたが、この日だけ天気予報は晴れでした。

朝の6時半にホテルを出ると、辺りは濃い霧で何も見えませんでした。

小さい頃から、「朝が霧だと快晴になる」と教えられたきたので、もはや、これは快晴になる気しかしません。


そんな中駅まで歩いていると、母親からメッセージが来ました。

「外国で誕生日を迎えるなんてね。失敗、笑われる・・・意義あり。また一歩ずつ頑張ってください」

母には、飛行機がオーストラリアに着いて以降連絡を取っていなかったので、「失敗、笑われる」のところを見て、ドキッとしました。

なんで俺がこの地で失敗していることを知っているのか、謎でしかありませんでした。

が、おかげで、今日が自分の誕生日であることを思い出しました。

しっかりと早起きしてちゃんと電車に乗ることばかりを考えていたので、あまり感慨にふけっている暇はありませんでした。

ですが、自分の誕生日に天気が快晴になってくれることに、心からジーンと来ました。

きっと、今日は良い日になるだろう。

そう思いました。


電車に乗ってブルーマウンテンの最寄駅に向かいました。

中心部から10分経つと落書きだらけの壁が出現し、30分経つと家がポツポツある集落を通り、1時間経つと山の上に来ました。

その一つ一つの景色が新鮮で、僕は写真だったり動画だったりをパシャパシャ撮っていました。

やはり、どこの国でも、田舎ってのは良いもんです。

視界が開けた眺めってのは、心に潤いをくれます。

晴れてくれてありがとう、とウキウキしました。


終着駅のカトゥンバが近づいてきました。

アナウンスが流れると、車両に残っていた数少ない乗客が、デッキの方に歩き始めました。

一人、白髪の老齢の男性が、最後まで車窓からの景色を楽しもうとする僕の横の通路を歩いているのが分かりました。

そして、ボソッと何かを言いました。

「See you fucking tourist」

え?

ファッキン観光客?

サーっと心が冷める感覚がしました。

視界が開けた眺めで潤ったはずの心が、潤いを失っていきました。

しばらく動けませんでしたが、必死に頭を動かして、この状況を理解しようと思いました。

ちょうど僕の横を通る時に、ボソッ、と、苛立ちを込めて言われました。

それを、僕は、極めて観光客っぽいこと、つまりパシャパシャと写真を撮ることと結び合わせました。

うわあああ。

頂いてしまったあああ。

本場の「Fucking」頂いてしまったあああ。

ウキウキのあまり、クソみたいなことしてしまったあああ。


ここで、僕は、最近東京で毎日のように見る外国人観光客たちを思い出しました。

「なんでここで写真撮るの? 邪魔だなあ」

「なんで電車でそんなに喋るの? うるさいなあ」

まさしく、僕がその外国人観光客になっていることに気付きました。

そんな僕に、「邪魔だなあ」とか、「うるさいなあ」とか思う資格はないことに気付きました。

これからは、東京で外国人観光客を見つけたら、「楽しんでいるんだなあ」と広い心で見よう、と決めました。


それから、ツアーガイドセンターでバスの1日切符を買い、バスに乗って観光を開始しました。

ゴンドラに乗ったり、山の崖に沿って歩いたり、写真スポットで写真を撮ったり、パンフレットに乗ってある通りの王道ルートを進み、景色を楽しみました。

ブルーマウンテンは山なんですが、なんていうか、見える景色が「木の海」なんですよね。

海沿いの崖を想像してください。

崖の下を見渡す限り、真っ平らの海が広がってますよね。

その海を、木に変えてください。

はい、ブルーマウンテンです。

広がっているのは、海じゃなくて、木です。

木が、真っ平らに遠くまでひたすら並んでいるんです。

「青い山」とは、うまく言ったものだな、と思いました。

海のような、山ですからね。

いや、本当にそういう理由で「ブルーマウンテン」なのかは、定かではないですが。


だんだんと、人が少なくなってきました。

団体ツアーっぽいグループが明らかにいなくなっていました。

僕の王道ルートはおそらく1日プランで、団体ツアーはその3分の1くらいの王道スポットしかカバーしないのでしょう。

静かに自然を楽しめるようになったので、ありがたかったです。


王道ルートによると、ここで巡回バスに乗って次のスポットに向かう必要があります。

ですが、今いるバス停に巡回バスが来るのは、20分後くらいです。

そこで、僕の気持ちを読み取ったかのように、こう説明がありました。

「次のバスまで待ち時間があったら、『ソリタリーレストラン』でお茶一杯!」

王道ルート万歳です。

僕は、ソリタリーレストランの中に入りました。

出てきたアジア系の店員の女性に人差し指を立て、一人であることを伝えました。

「飲み物だけなんですが、良いですか」

「もちろん。外の席はどう?」

「じゃあ、外で」

「席に座って待ってて」

言われた通りに外の席に座っていると、「良い景色でしょ」と言いながら店員の女性がメニューを持って来ました。

僕はメニューを受け取り、何を頼むかすぐに決めようと思いました。

「どこ出身?」

ですが、その選ぶのを遮るように、聞かれました。

「ジャパン」

「ああー、やっぱり日本人なんだ!」

急に、ものすごい元気な日本語が聞こえてきました。

なんと、この店員さんも日本人だったのです。

日本語を耳に入れるのがものすごく久しぶりで、頭の中に鳥肌が立つような感じがしました。

「うわ、日本語、ひさしぶりに聞きました」

「あら、こっち長いの?」

「まあ、6日目ですね」

「へえ、そうなの」

「すいません、紅茶と、このクッキーで」

「はーい」

すげ、こんなことあるんだな。

日本語を聞いたのは、飛行機で僕の足を踏んだCAから言われた「madajima様、お飲み物は」以来でした。

少し感慨にふけっていると、すぐその女性が戻ってきました。

「ごめん、紅茶の種類、何にする?」

英語をそのまま日本語にしているためか、一切敬語を使う気配がありませんでしたが、むしろそれが清々しかったです。

「いや、何でも良いですよ。じゃあ、カモミールで」

「ごめんね、私ここの勝手がよく分かってなくて」

「ああ、そうなんすね」

すると、彼女はレストランに戻って行きました。

勝手がわからない、と言ったのが少し気になりましたが、気にしないことにしました。

それより気になったのは、日焼けです。

僕は、彼女の顔があまりにも焦げているために、フィリピンとかその辺りの女性かと思いました。

ですが、ばっちりと、れっきとした日本人です。

中学校だか高校で、「オーストラリアはオゾン層破壊が進んでいる」と聞いていましたが、これはちょっととんでもないな、と思いました。

日本人を外国人に見せてしまうオゾン層破壊、とんでもないな、と。


注文したものを待っていると、隣の席にいた老夫婦が、「写真を撮ってくれますか」と聞いてきました。

ドイツ人の観光客で、物腰が非常に低くて丁寧で、「もちろん」と快く了承しました。

すると、二人は席を移動して、ブルーマウンテンが背景になるようにしました。

「ああ、良いアイディアですね」とつい口に出すと、二人は笑いました。

写真を撮ってあげると、再び物腰低く「ありがとう」とニンマリしてくれました。

なるほど、と僕は思いました。

これぞ観光客の鑑だな、と。

ファッキン観光客の対極にあるものを、見たような気がしました。


すると、女性店員が紅茶とクッキーを持ってやって来ました。

「ここ、どのくらいいるんですか?」

「3年かな」

「ああ、そうなんですね」

「私、住んでいるのはブラックヒースってところなんだけどね」

「へえ」

「友達に頼まれて、今日だけここで働いているのよ」

「え? 今日だけ?」

「そう、それで、さっきも勝手がよく分からなくて。ごめんね」

僕は素直に驚きました。

彼女がここで働くのは、今日だけ。

僕がここに来るのも、今日だけ。

しかも、今日は僕の誕生日。

いや、まあ、誕生日は関係ないかもですが、この偶然の繋がりに感動しました。

それからまた少し話してから、他のお客さんのところに呼ばれて行きました。

表情を見ると、彼女も、日本人との遭遇に喜んでいるようでした。


そろそろバスの時間になったので、お会計の紙をレジに持って行きました。

「あら、もう帰るの?」と日本人女性店員に言われました。

「そうですね。バスが来るので」

「バス?」

「なんか、ぐるぐる周っているバスがあるんですよ」

「へえ、車無しで、ここ、観光できるんだ」

「え? あ、まあ」

その喋りが、まさにローカルな人間みたいに聞こえてきました。

見た目も日本人じゃなければ、心もオーストラリアのこの地に染まったんだな、と気付きました。


それからも、彼女が住んでいるというブラックヒースという場所について色々話をしました。

彼女の喋りは面白く、また、お互い久々に日本語を喋る新鮮さもあって、話が尽きない気がしましたが、バスの時間がやって来ました。

「すいません、そろそろバスが来るので行きます。ありがとうございました。お会いできて良かったです」

「こちらこそ。ありがとねー!」


僕はソリタリーレストランを後にして、バス停で待ち始めました。

ここでふと、「あ、『今日、僕のバースデーなので、バスでー、観光しているんですよ』とか言えば良かったなあ」と思いました。

 

 

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↑電車からの景色。ブレるんだから、他人をイライラさせるくらいなら撮らなきゃ良かった・・・

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↑ブルーマウンテン 
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↑ソリタリーレストランでの紅茶とクッキー
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↑ソリタリーレストランの建物