madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

madajimaの海外 シドニー編 その4 - オールスター

僕は、とある駅のホームの端にいました。

緑色の山手線が、僕の真横を勢いよく通り過ぎていきます。

次に、水色の京浜東北線が通り抜けました。

「うっわ、すっげー」と僕は思っています。

「かっこいいなあ」とも思いました。

走って電車を追いかけたりもしました。


そして、目が覚めました。

自分がいるのは、ホテルのベッドの上です。

緑色の山手線や水色の京浜東北線など、影も形もありません。

夢の中で見たものが現実だと思っていた僕は、起きた瞬間、「あ、おれ、東京にいないんだ。オーストラリアにいるんだ」と驚きました。

そして、興奮しました。

うわ、半端ねえじゃん。俺、海外にいるんじゃん。


とはいえ、遊びで来ている訳ではありません。

仕事です。一応、仕事で来ているんです。

そう思い出すと、興奮が緊張になりました。


さて、ここで、僕がシドニーに来てやる仕事内容を簡潔に説明しようと思います。

僕が、はるばるシドニーまで来てやる、仕事内容。

さらっと言うと、それは、「話を聞く」それだけです。

ぶっちゃけ、それ以上何もする必要はありません。


まあそれではあれなので、もうちょっと具体的に説明します。

うちの会社はイギリスに本社があり、各国に支社があります。

その各国の支社をまとめる「リーダー支社」的なのがヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカといった地域にそれぞれあり、アジアオセアニア地域は、オーストラリアになります。

そして、このアジアオセアニアのITシステムは、全てオーストラリアがコントロールしています。

例えば、何かサーバーに問題があったら、オーストラリアにメールをして直してもらう、といった具合です。

そこで、今、会社のアジアオセアニアのオフィス全体に、一つのソフトウェアを導入しようとしています。

出退勤、給与、有給休暇といった、そういうことを管理するソフトウェアを、インドの会社を通して使おう、というプロジェクトです。

そのインドの会社がオーストラリアに来て、ソフトウェアの説明をする、といった具合です。

僕は、日本のオフィス代表として、その話を聞く、という訳です。


ルームサービスで頼んだ朝食を食べました。

会社の経費で落とせると思って多めに頼んだのですが、朝からベーコンやらウィンナー、甘いシリアルを食べられず、ほとんど残してしまいました。

普通の朝食バイキングは無いのか、と思ってしまいました。


そして、僕は着替え始めました。

違う色のジャケットとズボンを着て、昨日買った安いベルトを装着しようとしました。

そして、気付きました。

気付いてしまったのです。

ベルトが、長すぎたのです。

一番短いところの穴を使っても、ダボダボでした。

また、この安いベルトは、ハサミで切って短くできるタイプのものではありませんでした。

なので、この安いベルトは、使い物になりません。

踏んだり蹴ったり、傷口に塩、と言いましょうか、ベルトを忘れて、わざわざ買いに行ったのに、結局使い物にならないのでは、意味がありませんでした。

どうして気付けなかったのか。どうして分からなかったのか。どうしてこんなにアホなのか。


そんなことを考えていてもしょうがないので、僕は緩いながらもベルトをつけてホテルを出て、Google Mapsに沿ってオフィスに歩いて行きました。

20分ほど歩いて、オフィスに着き、会議室に入れてもらいました。

オフィスの受付の人は、「まあ、あなたが日本オフィスからの人ね! 聞いていたわ! よくこんな遠くまで!」と嬉しそうにしていました。

ああ、僕は日本のオフィスを代表しているんだな、と気が引き締まりました。

僕のベルトは、あまり引き締まっていませんでしたが。


やはり、参加者の中で日本人が僕だけなのもあり、会議の15分前に来たのは僕だけでした。

その次に来た、この会議の雑用を色々するプロジェクトマネージャーを手伝ったりしていました。

それから、香港オフィスの人がやってきました。

ショーンです。

あ、ちなみに名前はショーンですが、姿は香港人です。

彼らは英語名を大体持っているので。

僕と同じファイナンス部門のショーンとは、これまでメールでやり取りしたりしていましたが、実際に会って話すのは初めてでした。

ちょっとふっくらしていて目が大きく、メガネをかけていてしっかりしている感じです。

へえ、こんな感じなんだ、と、変な感動を覚えました。


「日本からはmadajimaだけ?」

「うん」

「どこのホテルに泊まってるの?」

「あの、Hyde ParkのPullmanホテル」

「ああ、そうなんだ。同じだね」

「あ、そうなの?」

「プール行った?」

「へ? プール?」

「屋上のプール。行ってないの? 良い景色だよ。まだちょっと寒いけど」

「いや、プールがあるなんて知らなかったけど」

僕は、ここで再びホテルの受付の人に苛立ちを覚えました。

普通、チェックインの時に言わないか?

普通、そういう施設の説明とかしないか?

5つ星だろ?

すると、ショーンは、「俺は、受付の人に説明してもらったけど」と言いました。

じゃあ、俺だけかい!

俺だけ、説明を受けなかったんかい!

マニュアルの徹底!


すると、他の人たちが入って来たりしたので、その人たちにあいさつをし始めました。

まず、ソフトウェア会社のインド人の人たちが現れました。

握手をして「初めまして」と言い合いました。

彼らは、少し緊張しているのが分かりました。


その次に、僕のボスのボスである人が来ました。

彼は、簡単に言うとアジアのファイナンス部門のトップです。

彼はたまに日本に来て、一緒に話したりしているので、「久しぶり」と言い合いました。


その次に、強面の男性が来ました。

彼がソフトウェア会社の人たちに自己紹介しているのを聞くと、この人は、アジアオセアニア地域のファイナンス部門のトップのようです。

要は、先ほどのアジアのファイナンス部門のトップのボスです。僕のボスのボスのボスです。

彼とも握手して、「初めまして」と言い合いました。


その次に、背が低くて太っていて、でかい黒ぶちのメガネをしている女性が来ました。

ソフトウェア会社の人たちへの自己紹介を聞くと、人事部のアジアのトップのようです。

確かに、名前を何度か聞いたことがありました。

ああ、この人がね、と思いました。

彼女とも握手をして「初めまして」と言いました。

すると、彼女は表情を曇らせ、「え?」と言われました。

彼女の黒ぶちメガネの奥にある目から、苛立ちの感情が伝わってきました。

「前に会ったこと、あるわよね?」

胸がサーっとなるのが分かりました。

「一回、私が日本行った時、オフィスで会ったわよね? 初めましてってどういうこと?」

感情を一切隠そうとしない彼女から、感情が全部伝わってきました。

僕は慌てながら記憶の中で必死に検索をかけ、そこでやっと思い出しました。

確かに、昔、会ったことがあります。2年以上前です。

僕は、「あー、確かに、そういえば、そうですね」と必死に言葉を繋げました。

彼女はあからさまに、「何こいつ、失礼だわね」と言わんばかりの表情を浮かべ、自分の席に座りました。

やっべ、何で忘れたんだろう。

仕事上関わらないとは言え、こんな背が低くて太ってて黒ぶちメガネで、一度見たら忘れないような見た目の偉い人なのに、何で忘れたんだろう。

逆にどうして、こんな普通の見た目の、100回会っても忘れそうな日本人を、あちらは覚えていたのだろう。

忘れてくれてた方がありがたかったのに。

やっちまった、と、めちゃくちゃ焦りました。


それから続々と人が入って来ましたが、自分の記憶力に自信を持てなくなった僕は、自分から進んであいさつをするのをやめました。

完全に、あの黒ぶちメガネに自信を撃ち抜かれてしまいました。

ただ、続々と入ってきた人たちがソフトウェア会社の人たちにあいさつしているのを耳をひそめて聞いていました。

すると、みんながみんな、何かしらのトップのようでした。

IT、マーケティング、トレーニング、そういった部門のアジアオセアニアのトップがやってきていました。

まさに、オールスターです。

アジアオセアニア地域のオールスターです。

これは、忙しいであろう彼らが一堂に介した、オールスターミーティングなんだと気付きました。

その中で、僕と、香港から来たショーンだけが、唯一の平社員でした。

唯一の、何のトップでもない人間でした。


僕は、会議が始まる前に、トイレに行くことにしました。

 

 

頼みすぎた朝飯

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