madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

恋愛反省文 その8 − 未来

老子がハワイに行きました。

僕のアパートは、成田空港まで直接行く線路の近くにあるので、海老子が泊まりに来て、その翌朝にお別れ、という感じでした。

朝に「たのしんでね!」「ありがと!」と言い合って別れ、仕事を終えて戻ってくると、机の上に置き手紙がありました。

「寂しくなりすぎて、泣いたりするなよ! いってきます! 海老子

僕は、感動しました。

老子から、僕のことを考えて何かを行動をするなど、今まで無かったからです。

「寂しくならないようにしよ」と思いました。

「また電話して、泣いたりするようなことをしないようにしよ」と思いました。

 

ただ、その2日後辺りから、「あれ? もしかして、あの置き手紙って、『旅行を楽しみたいから、あんまり連絡してくんなよ』的な意味なんじゃね?」と思い始めました。

とはいえ、「旅行中に友だちとLINEしてんじゃねーよ」と言った僕が、海老子の旅行中にひっきりなしにメッセージを送るのは、違う気がしました。

まあ、そもそも、メッセージでやり取りするの、好きじゃないですしね。

それでも、メッセージを一切送らないと、「私のこと全然気にしてねーの?」って捉えられると思ったので、日に2〜3通、ハワイの写真を送ってもらったりして、やり取りをしたりしていました。

 

そして、最初の週末、友だちと飲みに行ったりしました。

付き合い始めてから、週末は海老子と会うことが多かったので、久々に友だちと会う、良いタイミングでした。

もちろん、海老子がいないのは色々と寂しく、特にセックスできないのはツラかったですが、だからこそ、ポジティブなこと、今しかできないことをしようとおもいました。

 

友だちと話をしていても、海老子のことが頭に浮かび、海老子のことが口から出てきていました。

友だちは、それを微笑ましそうにしてくれました。

そして、その友だちに、伊豆旅行の時のセルフィーを見せました。

新幹線の中の写真、海や、遠くに映る大島を背景にした写真、温泉からあがった後に撮った写真、などなど、です。

そして、最初は微笑ましそうに見ていた友だちは、ある異変に気付きました。

「あれ、彼女、あんまり笑ってなくね?」

「え?」

僕は、最初何を言われているか分かりませんでしたが、もう一度写真を見てみると、僕だけ満面の笑みで、海老子は、サッカー選手の試合前みたいな、真面目な顔をしていました。

そして、不思議なことに、指摘されるまで全然気付いていませんでした。

「いや、まあ、彼女、写真とか撮られるの、恥ずかしいからさ」と、僕は苦い顔で言いました。

まあ、それは事実です。

本当に、ツーショットを撮ろうとするといつも嫌がれるんです。

ですが、ここで、「ああ、そういえば、俺とご飯を食べている時のテンションと、玉子と食べている時のテンション、全然違うなあ」とか、そういうことを考え始めてしまいました。

そして、想像通り、というか、予想通り、というか、だんだんと不安になってきました。

伊豆旅行、楽しかったのかな。

やっぱり、ワールドカップの後にJリーグでプレーするようなものだったのかな。

ハワイに行って、「やっぱり、日本にずっといるのとかありえないわ! また世界一周行ってくる!」とか言い出すんじゃないのかな。

「私は、やっぱり自由じゃないと!」みたいな。

 

そんな感じで、頭の中でひたすら葛藤しながら、海老子が出発してから10日ほど経ちました。

老子が帰ってくるまで、あと4日です。

6月21日木曜日の夜に成田空港に着き、僕のアパートに泊まる予定です。

僕も、成田空港に迎えに行く気満々でした。

帰ってきて、思いっきりハグして・・・みたいな妄想を、し始めました。

 

6月は、僕の会社の年度末で、かなり忙しくなり、残業も少しずつ増えていて、身体的にも精神的にも疲れ始めました。

疲れると、やはり色々と恋しくなります。

老子を早く抱き締めたいな。

身体も気持ちも安らぎたいな。

そんなことを考えながら、カレンダーを見ていました。

 

そして、ふと、Facebookを開きました。

週に1回、とあるラジオ局のFacebookページを開いて、「今週のトークテーマ」なるものを確認し、投稿するのが習慣になっていたからです。

そしてこの日、Facebookを開いてすぐ、「海老子の写真がシェアされたよ!」という通知が来ました。

こういう通知、普通は無視するんですが、海老子なので、見てみました。

すると、僕の知らない女の人が、海老子をタグ付けしていました。

そして、その写真には、海老子と女の子と、そして、日本人の男2人が映っていました。

「ハワイでできた友だち! みんなサーフィン初めてだったけど、楽しかった!」と、その女の子が言っていました。

 

え?

聞いてないけど?

ずっとメッセージしてたけど、友だちができたなんて、聞いてないけど?

しかも、男2人のうち、一人、明らかに海老子との距離が近いんですけど?

ハワイで会ったみたいだけど、すっごくフレンドリーなんですけど?

あれですか? 旅行でつい解放感あふれている感じ?

写真も、すっごく笑顔なんですけど?

俺といる時よりも、ずっと楽しそうなんですけど?

 

もちろん、海老子は、何もルールを破っている訳ではありません。

ハワイに行く前に「あっちで男友達を作って、一緒に遊んだりしないで」なんて決めなかったし、僕もそんなことをするな、と思っていませんでした。

けれども、ずっとメッセージをしていて、風景とか、食事とか、そういう楽しんでいる写真を送ってくれていて、それなのに、友だちができたとか、初めてサーフィンしたとか、そういうことに触れないことに、違和感を覚えました。

その辺りを隠されたことに、僕は、イライラしました。

「この男と一緒にサーフィンをしたり、食事をする以上のことがあったのでは?」と、してはいけないと分かっているのに、想像してしまう自分がいました。

安いホステルで、6人とかの相部屋で泊まっていることを知っていたため、尚更心配になりました。

そして、そういう想像は、止めることは難しく、どんどんどんどん、悪い方向に向かって行ってしまいました。

 

が、ここで、グッと我慢するようにしました。

自由です。

老子は、自由にさせなきゃいけません。

また、電話をして、弱音を吐いたりしてもいけません。

頭の回路を、ひたすら止めなきゃいけません。

イライラを、心配の流れを、やめなくてはなりません。

そうじゃなきゃ、海老子と付き合う資格なんてないんです。

そうじゃなきゃ、また海老子に陰で弱音を吐かれます。

そうじゃなきゃ、親に何か言われます。

そうじゃなきゃ、玉子に怒られてしまいます。

 

僕は、何も無かったかのように、Facebookで何も見ていないかのように、海老子とメッセージを交わし続けました。

ちょうどロシアワールドカップが始まったので、海老子とはそれを話したりしていました。

「会えば大丈夫、会えば全部大丈夫になる」と心に言い聞かせていました。

そうして、やっとのことで、海老子の帰国日、6月21日になりました。

この日は、ワールドカップで日本がコロンビアを倒した直後で、日本中がお祭り騒ぎでした。

なんだか、みんなの機嫌が良かったです。

僕の機嫌も、もちろん良かったです。

そして、僕は、朝にメッセージを送りました。

「海老子おはよう! 今日はついに帰国日だね! 成田空港に着くの、何時?」

僕のテンションは、すごく高かったです。

ノリノリで朝起きて、ノリノリでスマホを叩いていました。

「大迫はんぱねえ!」って10分に1回は言っていました。

そうして、仕事に行き、昼頃になると、海老子から返信が返ってきました。

「え? 何言ってるの?!今日じゃないよ!」

 

僕は、理解できませんでした。

頭がサーっとなるのが分かりました。

老子が日本を発つ時、たしかに「6月21日に帰る」と言っていました。

それで、「ああ、日本対コロンビア、ちょうど一緒に見れないね」と僕は悲しくなっていたことを、よく覚えています。

「え? 今日が帰ってくるんじゃなかったっけ?」と僕は急いでメッセージを送りました。

すると、海老子は「え?? 言ってなかったっけ、予定変えたんだよ?」

僕は、再び、頭に血が上る感覚がしました。

フライトが変更になったことなんて、一切聞いていないし、聞いていたとしたら、絶対に覚えているはずです。

念のため、メッセージを全部見直しましたが、そのようなことは一切話していませんでした。

 

帰国日に、僕のアパートに泊まることになっているのに、どうして僕に知らせないのか、全く理解できませんでした。

僕なんて、海老子にとってなんでもないんだな。

気を遣うのも面倒な存在なんだな。

サーフィンしたとか、友達ができたとか、楽しんでいることを共有したくもないし、予定の変更すら共有したくもない。

 

そして、問題は、それだけじゃありませんでした。

金曜日、「ネクストリーダーミーティング」という会社の会議に招待されていました。

会議、というか、ワークショップというか、話を聞くだけではなく、「どうやって会社を成長させていくか」を、グループごとに色んな角度から話し合って、発表していく、みたいなイベントでした。

僕の絶好のアピールのチャンスで、また、色んな人と仲良くなれるチャンスでもありました。

すでに、会社の友だちと、この後にブラジル対コスタリカパブリックビューイングで見に行くのが決まっていて、その試合が終わるのが夜の11時でした。

そこからアパートに帰ると、0時くらいになります。

老子は、僕のアパートの合鍵を置いてハワイに行ったので、一人では入れません。

 

その辺りのスケジュールを、全て最初から考える必要がありました。

この怒りを伝えるのか。

自分のスケジュールを正直に伝えるのか。

それとも、自分のスケジュールを海老子のためにキャンセルするのか。

いや、相手がこちらの都合を一切考えていないのに、こちらが相手の都合を考える必要があるのか。

答えは、なかなか出てきませんでした。

老子の「え?? 言ってなかったっけ、予定変えたんだよ?」というメッセージをじっと見つめたまま、20分ほど経っていました。

 

「おーい」と、海老子がメッセージを送ってきました。

「そっちは梅雨っすかー」と、こちらが色々考えているのを気にもせずに、メッセージを送ってきました。

適当な言い方をすることで、「どうするの? さっさと返信してよ」みたいなメッセージも込められているような感じがしました。

僕の怒りが、頂点に達する感覚を覚えました。

 

僕に言わずに予定を変えて、それを僕に伝えないことを悪びれもせずに、早く返信するよう言ってくるのは、あまりにも苛立たしかったです。

もはや、何も気にせずに、僕は自分の予定を予定通りに遂行して、海老子を僕のアパートの外で待たせようかな、とも思いました。

 

が、僕は、彼女を自由にしなくてはいけません。

全部、海老子の好きなようにしなければいけません。

予定を海老子の好きなように変えさせなければいけません。

 

僕は、自分の感情を殺すようにしました。

怒りを、頭の中から消え去るように、全力を尽くしました。

 

「ごめん、金曜日は、会社の都合で帰りが0時になっちゃうんだ」

「え? どうするの?」

「合鍵をポストの中に入れておく。ポストの開け方、あとで教えるね」

「りょうか〜い」

 

このやり取りを終えて、ふと思いました。

俺、どうして海老子と付き合っているんだろう?