madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

現場の職人さんを守るための熱中症対策メッセージ

↓こちらの応募作品です。

moribankin.com

  

むかしむかし、あるところに、アリ職人とキリギリス職人がいました。

 

この年も、いつも通り、夏が来ました。

ですが、この年は、いつも以上に、猛暑の夏でした。

 

暑い中も、アリ職人たちは、思いっきり汗をかいて、思いっきり働きました。

今まで、アリ職人の祖先がやってきたように、たくさん働いて、家族を養わなくてはいけません。

「俺は強いんだ。家族のために、暑さなんかに負けず、働き続けるぜ」

とあるアリ職人は、そう言います。

 

キリギリス職人は、そこそこ汗をかいて、そこそこ働きました。

仕事で無理をして、趣味のバイオリンが弾けなくなるのも勘弁なので、涼しい時間を選んで、身体と心に負荷をかけすぎないようにしました。

「まじ暑い。朝に働き終えて、昼間はクーラーの効いた部屋でバイオリンを弾きたいなあ」

とあるキリギリス職人は、そう言います。

 

次第に、夏の暑さが厳しくなりました。

 

アリ職人は、「俺は強いんだ」と頼もしく言っていた元気はどこへやら、体調不良になることが多くなってきてしまいました。

「家族のために働くつもりが、家族に看病されてしまうとは」

とあるアリ職人は、そう言います。

 

キリギリス職人は、「暑いの、かったるい」と毎日泣き言を言いながらも、夕方にバイオリンを弾くのを楽しみに、比較的涼しい朝に時間を絞って、無理をしない程度に仕事をしました。

「苦しい時こそ、音を奏でるんだよね」

とあるキリギリス職人は、そう言います。

 

やがて、夏の暑さが、これまでに無いほど、厳しいものになりました。

無理をし続けたアリ職人たちは、ついに入院してしまい、依頼された仕事をこなせなくなって、経営の雲行きが危うくなりました。

外の快晴とは裏腹に、です。

 

ここで、アリ職人のリーダーは、キリギリス職人たちに助けを求めました。

「すいません。手を貸していただけますか。みんな倒れて、仕事をこなせなくて」

しかし、キリギリス職人は「いや、そちらに手を貸すと、バイオリンをする時間がなくなるので、嫌だ」と突っぱねました。

アリ職人リーダーは、悲しそうな表情を浮かべます。

「ただ」とキリギリス職人は続けました。「一緒に音楽をやるのは良いよ」

「へ?」

「僕たちキリギリスは、バイオリンを弾くのは得意だけど、踊りは苦手なんだ」

「は?」

「だから、僕たちのバイオリンに合わせて、アリ職人さんたちが踊ってくれると、嬉しいな」

「ん?」

あまりに突拍子のない話に、アリ職人リーダーは戸惑いを隠せません。

それを可笑しく思いながら、キリギリス職人は、言いました。

「アリ職人さん。仕事のことばかり考えていると、うまくいかない時や、無理をしてしまった時に、苦しいだけだよ」

アリ職人リーダーは、ハッとした表情になります。

そして、キリギリス職人は、ニッと笑顔を浮かべ、続けて言いました。

「苦しい時に、踊ることができたら、楽しいと思わない?」

 

アリ職人リーダーは、キリギリス職人の言葉に感銘を受け、スケジュールを真似てみました。

涼しい朝に仕事を。昼間の暑い時には、クーラーの効いた部屋で、キリギリス職人と一緒に音楽を。

 

そんな日々が続くと、アリ職人は、ある事を発見しました。

夕方に仕事後に踊りをするようになってから、アリ職人たちの仕事もはかどるようになってきたのです。

仕事後の踊りが楽しみになると、朝のうちに仕事を必死に終わらせるようになり、効率が良くなったのです。

 

アリ職人は、今まで祖先がやって来なかった生き方、働き方を発見して、喜びました。

やがて、アリ職人は、苦しい時だけでなく、嬉しい時にも、音楽に合わせて踊りをするようになりましたとさ。

 

めでたし、めでたし。