madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

銀座の恋活パーティで出会ったバンダナの子 その12

その1はこちら

あらすじは↓

とうとう、バンダナの子のビジネスパートナーになるのを辞めることにしたmadajima。

コミュニティが嫌だ。

セミナーも嫌だ。

それを、バンダナの子に伝えた。

バンダナの子は、それに対して・・・。

 

 

僕とバンダナの子は、金曜日の夜8時に有楽町で会うことになった。

 

僕がマルイの前で待っていると、彼女が慌てて走ってきた。

その姿を見て、2ヶ月半ほど前に、初めて有楽町で会った時を思い出した。

あの時は、ひたすらバンダナの子が好きだったなあ。

それが、まさか、こういうとこまで来るとわね。

なつかしーわ。

 

「ごめんね、遅れて。時計の修理で」

へえ。新しいの、買わないんだ。

「まあね」

え、その時計ほっそいな! そりゃ壊れるわ。

「まあね」

 

金曜日の夜ということで、どこも混んでいたが、マクドナルドで席を見つけ、二人で向き合った。

そして、僕はすぐに本題に入った。

 

俺、いろんなセミナーに行って、いろんな話を聞いて、めっちゃ勉強になったわ。

で、そこで結局、会社員がんばろ、って思った。

起業して、人を集めて、ってところももちろん考えたけど、やっぱり、そのためには、まず会社員頑張んなきゃだな、って。

まあ、セミナーももう、行きたくないし。

これ以上、訳のわからないことにはついていけない、って感じで。

それに、「金が全て」「所有物が全て」みたいな価値観がかなり違うし、合わせようとしたくないし。

ベンツも、欲しくないし。

どこかのアホに傷つけられちゃうし。

 

「私もそうだったよ」

笑顔はない。イライラバーションのバンダナの子だった。

「私も物欲とかなくて、お金も欲しくなくて、専業主婦になりたくて」

「でも、セミナーに行って、経営者の人たちに会って、変わったんよな」

「自分の子どもに好きなことさせてあげたいし、結婚相手に頼らずに、自由な時間とお金をもっと増やしたい、って思うようになった」

 

まあ、そうだよね。

バンダナの子が、経営者さんたちの話を聞いて、ああいう風になりたい、って思ったのなら、それはすごく良いことだと思う。

バンダナの子には合ってると思うし、そのまま頑張ってほしい。

 

そう言うと、バンダナの子は少し下を向いた。

それから顔を上げると、僕を見下したような、馬鹿にするような表情になった。

「で、どうするの? なんだか、『会社員頑張りたい』って、セミナーに来たくない理由にしか聞こえないけど」

・・・そうだね。多分、そうだよ。でも、それほどまでに、あの環境にいるのはツラい。

「それで良いの?」

あの環境にいることで、今の会社って、俺恵まれてんだな、って思ったんだ。

今の会社は、プロフェッショナルな人が多くて、俺に自由を与えてくれてて。

その人たちのためにがんばろ、って思ったわ。

ま、そんな感じで、セミナーに行って、学ぶことだけ学んで、んで去る、みたいなおいしい感じで申し訳ないけどさ。

「おいしいとこ全然取ってないけどね。行っていないセミナー、まだたくさんあるし」

あ、そうなんだ。

「私たちの世代、老後のお金が、年金だけじゃ全然足りなくなること、みんな知らないじゃん」

そう、だね。

「経営者の視点があれば、会社員だとしても、投資家だとしても、役に立つんよな」

「そうすれば、お金も時間も手に入るんよ」

 

それから、バンダナの子の話が次々と飛んで来た。

お金の話、人間関係の話、夢の話。

まるで、幕張でのカリスマさんのようだった。

だが、それは、僕が「お経のような」と言った、表彰者の話のようでもあった。

残念ながら、あまり話は覚えていない。メモも取っていなかった。

覚えているのは、いつものように大きくて綺麗な目だけだ。

 

その大きな目を見ていると、「もっと見ていたいな」と思うようになる。

もっと話していたい。もっと話を聞きたい。

 

そう思って、バンダナの子に話を合わせてしまうようになった。

ウンウン、そうだよね。経営者にならないと、だよね。

ウンウン、そうだよね。お金持って、高いもの買って、稼いでいるオーラ出して、影響力を持っていかないとね。

 

コミュニティにい続けても良いかな。

バンダナの子の、ビジネスパートナーとして頑張り続けようかな。

だが、セミナーはな・・・。

 

「あのさ、普通、本当に嫌になったら、何も言わずにいなくなるでしょ?」

「私と話したい、って言ってきたのなら、セミナーに来続けた方が良いんじゃない?」

 

・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。

 

「新潟さんやベンツリーダーさんと会って、話して、勉強になったんでしょ?」

「じゃあ、新潟さんたちと会って、それから決めれば?」

「お世話になったんだから、せめて、一回会って、『今までありがとうございました』って言った方が良いんじゃない?」

 

・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。

 

「このまま会社員のままじゃあダメだって、頭でわかっているんでしょ?」

「だから、セミナーが面白い、って思ったんだし、全国会議も勉強になったんでしょ?」

「それなのに、周りの人が嫌いとか、そういう理由で、この学びの場から離れるって、すごくもったいなくない?」

「その周りの人が嫌いっていうのも、よくその人たちを知らずに嫌いになるっていうのもね」

「私も最初は気味わるがってたけど、でも、今は好き、って人も多いよ。全員じゃないけど」

 

僕は、黙りこくってしまった。

言おうと思っていたことが、頭から吹っ飛んだ。

「コミュニティが謎すぎて嫌だわ!」

「得体の知れないものについて行くために、セミナーに時間とお金を費やしたくないわ!」

そういうことを言うつもりだったが、頭から吹っ飛んだ。

代わりに、「え、セミナーに言ったら、もっと学べんの?」

「『会社員とりあえず頑張る』って言っている俺、もしかして貧弱な発想している?」

「この段階でコミュニティ去るのって、すごくもったいない?」

そんなことを考えてしまった。

 

・・・。

・・・・・・。

いやー、自分ってほんとよわっち・・・。

 

あ、やべ。

涙がボロボロ出てきてしまった。

鼻水も、ズルズル出てきてしまった。

 

なんなんだろう、自分。

バンダナの子とビジネスパートナーなるとか言いながら、たかだか「コミュニティが嫌だから」という理由で、それをやめようとしている自分がみじめに思えてきてしまった。

これまでの恋愛の失敗やら、人間関係の失敗を思い出しもした。

あれって、結局、我慢と継続が足りなかったからじゃね?

俺、このバンダナの子や、コミュニティに関しても、似た理由で同じ失敗しようとしているんじゃね?

俺、もっと、我慢と継続、すべきなんじゃね?

 

バンダナの子は、一瞬驚いた感じを見せたが、ナプキンを取ってきてくれた。

「私たち人間って、みんな、この私の時計みたいに、細くてもろいものだと思う」

「だからこそ、みんなで頑張って、人生を良くしていこうよ」

「修理してくれる人、いるんだし」

「新潟さんや私も、そのためにいるんだし」

 

何言ってんだよ。それ全然うまくないわ。

それを言いたかったが、鼻水でうまく言えない。

 

しばらくして、ようやく涙も収まった。

バンダナの子を見ると、バンダナの子の目も赤くなっていた。

「madajimaのこと勘違いしていたかも」

「私ね、新潟さんに、『バンダナの子と成功したい』って、泣かれたことがあるんよ」

「なんか、それを思い出した」

「私たちと一緒にさ、人生良くしていこうよ」

「新潟さんに一緒に会って、相談しよ」とバンダナの子が言う。

 

考えるエネルギーは、もうなかった。

涙でエネルギーが使い果たされてしまった。

 

うん。

僕はこくりと頷いた。

ぜひ、もう一度、新潟さんに会わさせてください。

 

「よし!」と言って、勢いよくバンダナの子は立ち上がった。

バンダナの子は、この日一番の満面の笑みを浮かべていた。

「それじゃ、新潟さんに言っておくね。また連絡するから」

 

僕は、おそらく真っ赤になっているだろう目を隠しながら、バンダナの子と一緒に店を出た。

夜10時の外は寒く、凍えるほどだった。

「さむ!」とバンダナの子は、腕を組んでそう言う。

僕もそう言いたかったが、そのエネルギーも無い。

 

僕がトボトボ歩いている前を、彼女はスタスタ歩いていた。

彼女の後ろ姿を見て、「この子と一緒に歩き続けたいな」と思った。

好きだな。

好きって、言おうかな。

好きって、言いてえ。

どうしよ。

 

「madajima、今日、電車はJR?」

バンダナの子が、急に振り返ってそう言った。

 

あー、どっちにしよ。JR、うーん。いや、地下鉄かな。

「おっけー」

 

再び、バンダナの子は歩き始めた。

僕は、「好きって言うか言わないか」ではなく、「JRか地下鉄か」を考えるようになった。

 

「じゃあ、私はチャリだから、ここで」

おっけ。今日は、ありがとう。

「全然良いよ。それじゃ、連絡するね」

 

ハグして良い?

僕は、そう言った。

彼女は笑い、良いよ、と言った。

 

僕は、バンダナの子の肩の上に手を回した。

彼女は、僕の背中に手を回し、顔を僕の胸にうずめた。

そうやって、1秒にも満たない間、僕たちはハグをした。

 

体を離して顔を見合わせると、バンダナの子の目には、うっすら涙が浮かんでいたのがわかった。

「じゃあね」

じゃ。

 

僕たちは互いに手を振り、それぞれの道へと向かった。

 

それから、僕はバンダナの子に会っていない。

きっと、これからも、会うことはないだろう。

 

続きます。