madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

銀座の恋活パーティで出会ったバンダナの子 その11

その1はこちら

あらすじは↓

1万5千人規模の全国会議に、1万500円を払って参加したmadajima。

このコミュニティの基本ルールを今更知ることになり、驚きと苛立ちを感じている。

他人のベンツに傷をつけてしまい、「ベンツとかいらねーな」と感じている。

全国会議2日目、果たしてこれは好転するのか?

 

2日目の朝も、行きたくないモードが全開だった。

バンダナの子には会いたいが、バンダナの子以外にはあんまり会いたくない。

だが、ベンツリーダーさんのベンツに傷をつけておいて、今日行かなかったら、大変である。

自分にそう言い聞かせて、電車に乗った。

 

幕張に着いた。

バンダナの子が、昨日とは違う色の、ヒールの高いスニーカーを履いている。

昨日、「ヒール履くの大変だろうけど、話しやすいわ」と言ったのを、喜んでくれたのだろうか、と考えた。

ふ、ふーん。

ああ、今日来てよかった。

 

セミナーが始まった。

カリスマさんが、マイクを持って話が始まった。

「今日は、素晴らしいゲストスピーカーに来ていただいております」

「それでは、樺沢紫苑さん、どうぞ!」

おおおお!

感動の雄叫びが、四方八方から聞こえる。

僕も、その雄叫びをあげていた。

あの、樺沢紫苑さん?

え! 生で話を聞けるの?

 

樺沢紫苑さんは、精神科医として多くの本を書いている。

その中に、「超時間術」という本があり、「金持ち父さん貧乏父さん」を読み終わった後、新潟さんに薦められていた。

時間の使い方についてよく考えさせられる内容で、かなり感動して、本に書いてある内容をすぐさま実践したりしていた。

その著者が、数十メートル先に立っている。

す、すげーやん。

コミュニティの力、すげーやん。

 

「ではまず、私の著者を読んだことがある人、手をあげてみてください」

すると、僕から見える限り、全員が手をあげていた。

その挙がった手の数を見て、樺沢さんは、明らかに嬉しそうだった。

そして、話が始まった。

 

「皆さんのことは、起業家、あるいは起業家を目指す方々と聞いています」

「毎年、どれくらいの数の会社ができていると思いますか?」

「20万です」

「起業をするということは、その20万と、ヨーイドンでマラソンするようなものです」

「そこで、圧倒的に他と差をつける方法があります」

 

おおおお!

「知りたいですか?」

ハーイ!

「それじゃ、教えてあげます」 

イェーイ!

 

ライブかよ。

 

その後も、「おおおお!」という1万5千人の超大げさなリアクションが、樺沢さんの気分をひたすら良くしていたのが、みて取れた。

そして、内容もひたすら面白かったので、こちらの気分も良くなった。

 

樺沢紫苑さんは、何年もブログやフェイスブックYouTubeの投稿を毎日続けて、本の執筆もして、さらに精神科医の仕事もして、さらに映画を月に15本映画館で見て、さらに海外旅行をめちゃくちゃしているような人である。

そんな人の時間の使い方を具体的に聞くのは、非常に楽しかった。

 

2時間近くがあっという間に経った。

 

「最後に、信用できる人と、信用できない人の見分け方を教えます」

おおおお!

「知りたいですか?」

ハーイ!

「それじゃ、教えてあげます」 

イェーイ!

 

僕も、最後の方はリアクションが大げさになっていた。

 

「信用できない人は、自分の話しかしません」

「これを、私はクレクレ星人と呼んでいます」

「こういう人たちは、自分の利益のことしか考えていません」

「あまり関わらないのが、身のためです」

「信用できる人は、相手の話をしっかりと聞きます」

「そういう人たちは、相手の立場や状況も、しっかりと考えて、思いやることができる人たちです」

「また、きちんと与えることができる人です」

 

うわー。

それ、バンダナの子じゃん。

バンダナの子、完全にクレクレ星人じゃん。

僕は、隣に座るバンダナの子の表情を見た。

あはは、おかしー、と笑っているようだった。

 

樺沢紫苑さんが、拍手喝采の中でステージから降りた。

いや、これ聞けただけで、1万500円の元をとったわ。

このプレゼンだけで、2日間パイプ椅子に座る価値があったわ。

 

休憩が入り、マイクがカリスマさんの手に戻った。

「いやー、樺沢さんのお話、素晴らしかったですね」

「さて、ここでお知らせです」

「みなさん、なんと、昨日ステージで歌ってくれた高橋あずみさんのニューシングルが、レコチョクでデイリー1位となりました!」

うおおおお!と嬉しそうな声が周りから上がる。

え、すごーい! とバンダナの子たちも言う。

「こういうのを見て、音楽業界も黙ってはいないでしょう」

「いずれ、このコミュニティのことが知れ渡ることになります」

「こうやって、どんどん各業界に影響力を持って行こうと思います」

 

僕は、ひたすらメモを取り続けた。

デイリーランキング安室奈美恵やらBacknumberやらを抑えて、1位。

すげえ、すげえ、と周りは驚いている。

だが、これってどうなの?

なんかちがくね?

もし、僕のアプリ、例えばサラリーマンクンポケットが、こういう形でアプリランキング1位になったら、嬉しいのか?

 

そんなことを考える暇も無い中、次のコーナーへと進む。

「すでに成功している人」が壇上に上がって、プレゼンを行ない始めた。

 

「私は、本当に、毎日残業続きで、身をすり減らして生きてきました」

「もうこんなの嫌だな、って思うエネルギーすら無くなっていました」

「でも、この環境にきて、変わったんです」

「人生が変わりました」

「ここで、自分の周りの環境が、どれだけ大事かわかったんです」

「辛かったことも多かったですが、この環境で頑張ってきてよかったです」

「カリスマさんの言う通りにやってきてよかったです」

「本当に周りの人に感謝したいです」

 

続いて、別の「成功している人」が登壇した。

「私は本当にダメダメだったんです」

「でも、この環境にきて、変わりました」

「この環境の人たちは、こんなダメダメな私でも、優しく厳しく接してくれました」

「辛かったことも多かったですが、この環境で頑張ってきてよかったです」

「周りの人に、『綺麗になったね』と言われるようになり、嬉しいです」

「金銭的に余裕ができて、親孝行もできました」

「本当に、師匠に感謝しています」

「他の人も成功できるように、どんどんサポートしていきたいです」

 

つまんな。

この無限ループ、つまんな。

 

樺沢紫苑さんの話は、めちゃくちゃ具体的で、「自分はこう言う風にやっていて」「それは科学的にこういう効果があると証明されているからで」というのを聞けた。

その後だけに、フワッフワな内容のお経を唱える人たちの話が、全然面白くない。

何をしてるの?

何がしたいの?

何を教えてもらったの?

それが、一切分からない。

 

そんなこんなで、2日目が終了した。

疲れた。

ひたすら疲れた。

精神的にも、肉体的にも。

 

みんなで電車に乗って帰った。

正直、この時間が一番ツラかった。

電車の中で、バンダナの子とムネリン以外は大して仲の良くない、あまり仲良くなろうとも思わない8人ほどが円になり、品のなくてつまらないジョークを言い合っている。

が、その円から離れる勇気も気力もない自分自身も、つまらない。

 

東京駅に着いて帰り道がバラバラになり、僕が最後一人になった時、ガッツポーズをした。

あーかったるかった!

やっと解放されたぜ!

 

この時、僕の頭は、この感情を理解できていなかった。

「なんで、こんなに解放感を感じているの?」

「なんで、ガッツポーズを超自然にしてんの?」

「なんで、セミナー終わってこんなに嬉しいの?」

 

次の日、成人の日で休みだった。

僕は、ベッドに寝転がり、天井を見ながら、色々と考えた。

 

そして、ふと、気になったことがあったので、スマホを手に取った。

幕張の「主なイベント予定」という所を見てみた。

すると、全国会議があった1月5日と、1月6日の予定が、空白になっている。

ん?

 

次に、高橋あずみのTwitterを見てみた。

デイリーランキング1位になりましたー!」とかつぶやいているかな、と思った。

が、何もツイートが無い。

ん?

 

ちょっと待てよ。

俺は、あのコミュニティの名前を知らないぞ。

何かしら、名前があるはずでしょ、1万5000人が集まるところなら。

そこで、入場に必要だったチケットを見てみたが、「全国会議」と書いてあるだけだ。

ムムム。

 

あ、そういえば、カリスマさんの名前も知らない。

ECサイトを立ち上げる」とか「本を出版した」とか言っていたが、そのサイトや本の名前を知らない。

ムムム。

 

色々な手を使って検索してみたが、このコミュニティに関する情報は、ネットで一切得られなかった。

それもそのはず、頻出単語は「環境」「師匠」「現場」「目標達成」みたいな、普通名詞ばかり。

 

だが、「世界有数のリアルのコミュニティ」に関して、これほどネットで情報を得られないものなのか?

いや、もしかして、それは意図的なのか?

こうやって、ネットで検索されて、悪い評判を見られないように。

ブログとかSNSで、悪い評判を書かれないように。

「検索ワード」になりうるものを、一切排除している?

固有名詞は、一切使わないようにしている?

 

僕は、このコミュニティを嫌いになった。

正確に言うと、このコミュニティにいる自分が嫌いになった。

ここまで隠し隠しにやるなら、まともなことやってないでしょう。

ここまで情熱を持ってやってるのに隠し隠しにするなんて、ちがくね?

 

セミナーとか嫌いだし、セミナーに参加している人たちも嫌い。

コミュニティ全体の、黒々とした不気味な感じも嫌い。

もはや、コミュニティと関わる意味なんて、ないっしょ。

あ、でも、バンダナの子・・・。

・・・。

バンダナの子とは、会いたいな・・・。

 

それから色々考えながら、2日後、僕はバンダナの子にメッセージを打った。

 

「俺、このコミュニティから離れることにしたわ」

「今週、また話せない?」

 

続きます。