madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

銀座の恋活パーティで出会ったバンダナの子 その10

その1はこちら

あらすじは↓

ビジネスマインドのバンダナの子から、やる気をもらい続けるmadajima。

1万5千人が集まるという、起業家コミュニティの全国会議に誘われ、二つ返事で行くことを決めた。

バンダナの子と一緒に頑張りたい。

バンダナの子の大きな目に合う、大きな心の男になりたい。

だが、当日になって、なぜかやる気が・・・。

 

 

 

バンダナの子と会った直後は「うおおお! 幕張で全国会議、めちゃ楽しみー!」とか思っていたが、当日になると、行きたくないモードが全開になった。

布団から起き上がるのもしんどい。

寒いのもあったが、それ以上の何かが、行きたくないモードの要因になっていた。

 

年末年始も、バンダナの子と「去年は出会えてよかったわ! 今年も一緒に頑張ろう!」とメッセージで言い合ったのだが、そのやる気というか気合いも、当日になってどこかに行った感がある。

サラリーマンクンポケットを作るやる気はあるが、セミナーには行きたくない。

 

まあ、正直、好きなのはバンダナの子だけだからねえ。

バンダナの子に会うのは楽しみだけど、その他1万4999人と会うことを考えると、ちょっとだるい、っていうのかねえ。

好きでもない野球の試合を、付き合いたての彼氏に連れていかれる彼女の気分って、こんな感じなのだろうか。

そうか、なるほどね・・・。

 

とりあえず、この全国会議は行こう。

1万500円、払ったしな。

バンダナの子に会えるしな。

 

人混みがすごい中、幕張の駅で待ち合わせ、10人ほどのグループで会場に向かった。

全員と仲がいい訳ではなく、自然とバンダナの子と並んで歩く。

「今日、寒いね〜」

そして、口に手を当てるバンダナの子の顔がいつもより近いことに気づいた。

足元を見ると、高いヒールのスニーカーみたいなものを履いているのが見える。

ふーん、歩くの大変そう。

でも。

顔が近くて、話しやすいね。

それを言ってみた。

バンダナの子は、ニンマリとした笑顔を隠すように下を向いた。

か、かわいいやん。

こ、これが、全国会議に来た理由ですよ。

 

しばらくすると、ベンツリーダーさんが一人でノコノコ歩いているのを、バンダナの子が見つけた。

「ベンツリーダーさぁーん!」

手を振ると、ベンツリーダーさんが、合流しようと近づいてきた。

射程圏内に入ると、バンダナの子は、ベンツリーダーさんの腕を掴みに行った。

「結婚、おめでとうございます!」

え、結婚したんですか?

え、結婚したのに腕組んじゃうの?

一気に疑問が出てきて、言葉が出ない。

逆にイラっとする。

こういうのを見たくないから、セミナーに来たくないんだよな、と思い出した。

 

「おめでとうございます」という声が、あちらこちらから聞こえた。

「ありがとう」と、ベンツリーダーさんは照れ臭そうに言う。

「今日はもちろん、あのベンツで来たんですよね?」

「ん、まあ、ね」

「madajima、今日帰りはベンツ乗るんよ! ベンツリーダーさんと約束してあるんだ!」

 

ふ、ふーん。

そ、そうか、2018年になって、男はベンツを持たないと結婚できない時代になったのか。

そうしないと、女は寄ってこないのか。

厳しいな。

借金するかな。

 

セミナー会場に入ると、そのベンツリーダーさんとバンダナの子に挟まれる席だった。

前から15列目くらいで、さらにほぼ真正面だ。

「おおおー! めっちゃ良い席じゃん!」とバンダナの子はテンションを上げる。

「良かったね。初参加の人は、前で紹介者と一緒に座れるんよ!」

あ、それで、ムネリンとかは後ろ、ってこと? 誰も連れて来ていないみたいだから。

「あ、うん、そうだね」

 

セミナー開始まで、ベンツリーダーさんは、色んな人からひっきりなしに話しかけられている。

「結婚おめでとうございます!」

「ベンツ、どうですか?」

だが、ベンツリーダーさんは、調子に乗るでもなく、あくまで謙虚さ、腰の低さを保っていて、笑いを取っている。

新潟さんもそうだけど、こういう人の態度を見ていると、本当に勉強になるな、と思う。

 

僕は暇だったので、周りを見ていた。

壁や照明には、一切装飾が施されていないままなことに気づく。

前方も、ステージがあって、その左右にスクリーンがあるだけ。

「巨大なコンクリの建物があるので、パイプ椅子持って、みんなここで集まって会議しましょー」

そんな感じだった。

 

ガヤガヤした中、40〜50歳の色黒で細い人が、ステージ上に立っていた。

「えー、みなさん、こんにちは。カリスマです」

すると、しんとなる。

へえ、あれが、このコミュニティを作った人、カリスマさんね。

「まず最初に言わせてもらいますが、付き合いで来ている人とか、なんとなく聞いている人は、帰ってもらって大丈夫です」

「今、ものすごい勢いで人が増えていて、この毎月の全体会議も、今回は1万5千人をこえました」

「バブルになって来ているので、その泡をどんどん針で刺していこうと思っています」

 

えー、それ、金を払った後に言うのか。

1万500円払って幕張まで来て、「なんとなく来たので、帰ります」なんて、そんなことしている人が逆にカリスマっぽいわ。

しかし、そういうのを抜きにして、カリスマさんは、堂々と太い声で話している。

 

「2018年も始まりましたね。私の目標は、年商100億行くことです」

おわあああ、という声が聞こえて来る。ざわざわ、とし始める。

そして、「去年はあれこれに投資して、何億稼いだ」とか、そういう話をしていた。

その度に、すげえ、すげえ、といった声が上がる。

 

「ここまでのお金の取引になるとね、やっぱりアホにならなくちゃダメですよ」

「頭で考えすぎてもダメなのでね」

「あ、ちなみに、自分のことだから自分で責任取っているだけで、他の人には絶対勧めません」

 

話がどんどんどんどん、波のように押し寄せて来る。

 

「私たちは、こういう風に、売り上げにこだわった、商売人です」

「ある意味、洗脳集団ですよ」

「洗脳集団って言ったら、この近くにあるディズニーランドだって、洗脳されている人たちの集まりですからね」

「ミッキーなんて、中に入っているの、汗臭いハゲのおっさんですからね」

「あんなのに『きゃー!』って言って飛びつくなんて、重度の洗脳ですよ」

「そんな風に、人は何かしらに洗脳されているんです」

「さっきも言ったように、この洗脳集団が嫌だったら、すぐに出て行って、ディズニー行ってシーのなかに沈んでてください」

 

会場全体から大きな笑い声が聞こえる。

ディズニーが大好きのバンダナの子は、明らかな愛想笑いをしていた。

 

「私たちほど、リアルで繋がっているコミュニティは世界にはありません」

「宗教や会社といった繋がりを除いた、異業種の起業家集団の集まりとしては、間違いなく世界有数の規模です」

フェイスブックやグーグルで、『幕張集合!』って呼びかけても、集まらないでしょう」

「今、企業はこういうリアルの繋がりを欲しています」

「このコミュニティの持つ影響力を知ったら、各業界も黙ってはいないでしょう」

 

ショットガンのように、カリスマさんの話が進む。

僕も、面白いと思ったので、ひたすらメモを取っていた。

録音や撮影はダメだったが、メモは良いらしい。

 

「それでは、私の話もそろそろにして、高橋あずみさんの登場してもらいます」

すると、舞台袖から小柄な女性が現れた。

「みなさん、お疲れ様でーす」

「ああ、あずみちゃん、相変わらず良い声してるねえ」

「あ、ありがとうございます!」

「この子ね、本当に歌がうまいんですよ〜。今日は、新曲を歌ってくれるの?」

「はい! 12月にリリースしたばかりの・・・」

 

そうやって、カリスマさんと色々な紹介やら宣伝やらした後に、高橋あずみさんが歌い始めた。

僕は、音楽について一切詳しくないが、確かに歌声は強烈で、うまいなあ、と思った。

だが、それ以外の感想は出てこない。

なんだか、歌うために歌っているような曲だなあ、と思った。

歌の巧さを強調しようとしている感じ。

パス回ししているだけで、ゴールを狙わないような感じ。

ま、僕の好みではないな。

 

歌が終わり、拍手喝采となった。

すると、カリスマさんが出てきた。

「それではみなさん! この新曲、ダウンロードしましょう!」

「はい、スマホを開いてください」

「今から、メーリスでURLを送るので」

「1万人が今日ダウンロードしたら、間違いなくランキングで上位になりますよ」

 

え、ええええ!

なに、それ。

命令じゃん。

「madajimaはメーリスに入っていないから、私がLINEで送るね」とバンダナの子が言ってくる。

あ、そ。

僕は当然、そのリンクをクリックすらしなかった。

だが、バンダナの子は普通に買っているようだった。

 

これが、「影響力」ねえ・・・。

これが、「リアルのつながり」ねえ・・・。

カリスマさんの号令に従って、1万5千人が動く、これがコミュニティの力か・・・。

 

「これで、高橋あずみちゃんが1位になったら、音楽業界も黙っていません」

「私たちの存在も知ることになり、パートナーシップを結びたいと考える企業も出てくるでしょう」

「今は、コミュニティから本を出版したり、ECサイトを立ち上げたりしようとしています」

「そのことは、また進展があり次第、共有します」

その声には、圧倒的な自信と信念を感じられた。

僕は、せっせとメモをとった。

 

次に、「表彰」の時間となった。

「では、先月新たに15万を達成した人、前へ!」というアナウンスがあり、次々といろんな人たちが前へ向かっていく。

すると、隣のバンダナの子が、スクッと立ち上がった。

そして、榮倉の子と一緒にステージに向かっていった。 

え?

バンダナの子、すげえじゃん。

15万、達成してんじゃん。

 

ステージに乗り切れないほどの人が前に行き、「おめでとうございまーす!」と司会者が言うと、また一斉に戻って来た。

バンダナの子が席に戻ってきたので、ハイタッチした。

バチーン、と、嬉しそうに叩いてくる。

 

次に、「それでは、新たに2系列達成した方、立ってください!」と号令がかかる。

ケ、ケイレツ?

ここでも、スクッと、バンダナの子が立ち上がった。

イェーイ、と言って、両手でガッツポーズしている。

「おめでとうございまーす!」と司会者が言うと、席に座った。

 

2系列、って何?

バンダナの子が座ってすぐ、僕はそう聞いてみた。

すると、さっきの嬉しそうな顔は何処へやら、急に不機嫌そうな表情になった。

「自分が紹介した人が、15万達成すると1系列になるの」

へえ。じゃあ、紹介した二人が達成したの?

「いや、私が今回達成して、二人になった」

あ、自分も含めるんだ。

「そうだけど?」

 

イラッ。

なぜ、そこでキレ気味になるのか。

「質問してきて」って言ったの、そっちじゃん。

 

その後も、次々と表彰がされていった。

だんだんと、ステージに登る人も少なくなり、登壇者が簡単なスピーチをするようになった。

「ボーナスで何万達成して〜」

「この環境に感謝しながら〜」

「師匠のいうことを聞きながら〜」

出た。

訳のわからん単語のオンパレードである。

僕からすると、お坊さんがお経を読んでいる感覚すらしたが、周りの人はウンウンと頷き、大きな拍手を送っている。

 

もうバンダナの子には聞きまいと、逆側の隣にいた、ベンツリーダーさんに聞いてみた。

あの、ボーナスって、何ですか。

「うーん」

ベンツリーダーさんは困った顔をしたが、バンダナの子とは違い、「わかるように答えてあげたい」という気持ちが伝わってくる。

「紹介した人と、紹介してもらった人を、それぞれAさん、Bさん、ってするじゃん」

「例とすると、バンダナの子がAさんで、madajimaがBさんね」

「で、Bさんが儲けを出すようになると、その売り上げの一部をAさんがもらうのね」

「それが、ボーナス」

へ? まじですか?

僕は目が点になりそうだった。

だから、バンダナの子は、俺を新潟さんに会わせたり、セミナーに誘ったりして、起業をするように誘導していたのか。

俺が売り上げを上げて、その一部をもらうために。

ま、新潟さんに会わせたり、セミナーに誘ったりは、不動産の仲介手数料みたいなものだろう。

そのおかげで色々学んでいるし、そこはまだ良い。

だけど。

 

何でこのコンセプトを、俺は今知っているんですかね?

このコミュニティの根幹とも言えるルールというか仕組みを、なぜ俺は今まで知ることがなかったんですかね?

おかしくないですか?

 

それが、声に出ていた。

ベンツリーダーさんに向かって、少し声を張り上げて聞いていた。

周りの人が、こちらに視線を向けて来ていたのが横目でわかった。

 

「こういうのは情報が制限されているんだ」

「会社もそうでしょ? 社長が決めて、役員に伝わって、それが部長に伝わって・・・」

「俺も、その伝言を受け取った側でしかない。このコミュニティに関する全てのことを知っている訳じゃない」

「その伝言は、伝えられる人にしか伝わらない」

 

いやー、かったるいですね。

初参加の人を前に座らせる配慮をしておきながら、初参加の人に分からない話をあえてするなんて、訳わかんないですけどね。

「うーん」 

僕がそう言うと、ベンツリーダーさんは黙った。

表彰者のスピーチは、まだ続いている。

バンダナの子がどういう表情をしているかは、見えない。

 

「madajimaも、セミナーに継続して来れば、だんだんとわかるようになるよ」

ベンツリーダーさんは、少し悲しそうに、けれども信念がこもった声で、そう言った。

僕は黙って、ベンツリーダーさんが言ったことを、メモした。

 

その時、僕は多少怒ったりしていたが、休憩時間などで、バンダナの子やムネリン、新潟さんと話したりして、気分は落ち着いていた。

まあ、機嫌を悪くしても、しょうがないしね。

そんなこんなで、長い長い全国会議の1日目が終わった。

 

僕たちは、駅に向かって歩いていた。

時間は17時で、真っ暗である。

パイプ椅子に座ってばかりで疲れていた。

あー、電車乗るの、しんどいな。

すると、「madajima、ベンツ乗るの、楽しみだね!」とバンダナの子が言ってきた。

え?

え? 俺も乗るの?

「そうだけど?」

バンダナの子は、あからさまに嫌そうな顔をして言う。

えー、朝言っていた「今日、帰りはベンツ乗るんよ!」の主語って、俺とバンダナの子の事か。

日本語むじーな。

 

僕たちと、あともう一組の紹介者と紹介された人、AさんとBさんがベンツに乗った。

車に乗り、エンジンがかかると、車内の照明がブワーッと明るくなった。

うお、なにこの、ライブハウスみたいな演出。

すげーテンション上がる。

車の天井にも窓がついていて、夜空を見る事ができる。

すげーテンション上がる。

 

が、これ以上テンションが上がることはなかった。

乗ってしまえば、結局は車だな、と思った。

特別静かな訳ではなく、特別座り心地がいい訳でもない。

 

「これ、いくらしたんですか?」と、Bさんが聞いた。

「1000万円かな」ベンツリーダーさんが答える。

「え、1000万で買えるんですね」

「ただね、維持費で、毎月20万かかっちゃうんだよ」

「え? 毎月20万?」

「そうそう。それに修理とかになると、めちゃくちゃ高いし。ベンツだけの、特殊な素材使っているみたいで」

 

うーわ。

どういう事。

とんでもねえな。

毎月20万って、まじか。

僕は、それをメモにとった。

 

あっという間に都内に入り、地下鉄の駅の近くに停めてくれた。

ベンツリーダーさん、運転ありがとうございました。バンダナの子、乗せてくれるよう手配してくれてありがとう。

シートベルトを外しながら、僕はそう言って感謝した。

電車よりも遥かに快適で、リラックスして会話ができて、車もいいもんだな、と思い始めていた。

いいね、いつか俺も、こうやって、みんなを車に乗せたいかな。

「おう、明日もよろしくな」

「また明日ね」

それを聞いて、僕はバンッと勢いよく扉を開けた。

ガリッ。

あっ。

扉が、ガードレールに勢いよくぶつかった。

 

あ、まじですいません!

「いいよいいよ」ベンツリーダーさんはそう言いながらも、この日初めて、不快そうな顔をした。

僕はペコペコ頭を下げた。

そして、さりげなく、ガードレールにぶつかった部分を指で触ってみた。

ガッツリ、傷がついてるー!

「ベンツだけの特殊な素材」に、傷がついてるー!

 

もちろんその事は言わずに、優しく扉を閉めて、礼をして帰った。

 

車は欲しくないなあ。

毎月20万払って必死に管理しても、俺みたいなアホに簡単に傷をつけられるからな・・・。

毎月20万払っても、新品からどんどん傷がついていくだけだからな・・・。

人間や植物と違って、成長する訳じゃないからな・・・。

ただひたすら、一生管理するだけだからな・・・。

帰りの地下鉄の中で、そんなことも必死にメモにとった。

 

続きます。