madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

T君、お前まじで その5

これまでのあらすじ↓

オフィス内の金髪美女、セイラをデートに誘ったが、「仕事の人とは、仕事の外で会いたくない」と言われた。

それならば、と、madajimaは「仕事辞めたら、また誘うよ」と言った。

セイラは、デートに来てくれるのか?

 

あまり書いていなかったが、この時、僕はこの仕事に嫌気が差していた。

お金はそこそこ良かったが、仕事内容に未来が感じられない。

僕が得意で、やりたい事はあったが、それ以上にやるべき事が多すぎて、自分の最大限の力が発揮できないのがツラい。

 

セイラとメッセージのやり取りをした次の日、上司を呼んで話をした。

自分がどうしてこの仕事をやっているのかわからない、と。

自分がもっと違う仕事をしたら、会社にもっと貢献できるのに。

もちろん、セイラの事は一切触れなかった。

 

上司は僕の気持ち、現状の事をもともとわかっていた。

だが、「madajimaがもっと力を発揮できる新しいポジションを作る場合、今madajimaがやっている仕事の、後任の人を探さなくてはならない」「その予算を確保しないといけない」「最速でも3ヶ月はかかる」ということだった。

僕が入ってから、上司の残業時間がひと月40時間からゼロになった事もあり、何がなんでも僕をキープしたい気持ちは伝わってきた。

もちろん非常にありがたかったが、3ヶ月は待てない。

辞めよう、と決意した。

 

3ヶ月すら待てない、って事は、僕は、セイラと会うのが楽しみなだけで会社に来ていたんだな。

会社にいる事でセイラと付き合えないのなら、会社にいる意味は無いな。

最終的にはそれが背中を押し、僕は退職届を提出した。

 

「madajima、辞めんなよ」

T君はそう言ってくれた。

「セイラはそこまで良い女でもないよ」とまで言い出した。

「すぐキレるし、madajimaにはもったいないくらいだから」

「まあ、顔は良いけどね」

いや、まあ、普通に辞めようと思ったし、ちょうど良いタイミングだよ、と説明したら、「他の女にいったほうが良いよ」と念を押すように返された。

 

他の社員からも、「辞めるんだって? 超残念」と言われたりした。

だが、僕とセイラの事は誰も知らないようだった。

T君、案外口カタいじゃん、と安心した。

と、同時に、セイラの事は諦めて、3ヶ月我慢すれば良かったかな、と考え始めてしまった。

 

そんな時、セイラと廊下ですれ違った。

メッセージのやり取りをした後、初めてだった。

 

僕が目を合わせて挨拶すると、セイラは手をあげて応えた。

ひさしぶりじゃん、と言うと、セイラはうなずいて応えた。

 

いやー、いざ辞めるってなると、なんだか寂しいね。

「あんたが決めた事でしょ」

え、あ、うん、まあ、そうなんだけど。

 

そこで会話は終了した。

僕はもうちょっと話したかったが、セイラが会話をさっさと終わらせたがっていたのが、ありありとわかった。

僕が始めた会話内容のチョイスが悪かったのもあるが、セイラの表情に、笑顔はあまりなかった。

 

やっべ、これダメなやつじゃん。

なんだかわからないけど、すっごくダメそう。

 

え、ちょっと待って、じゃあ何で俺辞めるの?

会社辞めて、セイラともうまくいかなかったら、なんなの?

 

いや、まだわからない。

僕の最終出社日は、たまたま、毎月開催の会社全体パーティの日だ。

そこでお酒を交わしながら話せば、なんとかなるだろう。

セイラが楽しんでいるときに話せば、なんとかなるだろう。

 

そして、最終出社日になった。

色んな意味で緊張しながら、業務の引き継ぎなどをやっていた。

 

だが、気付いた。

気付いてしまった。

オフィスに、セイラの姿が無い。

セイラのデスクのモニターも、ずっと真っ暗なままだ。

セイラ、いなくね?

今日、来ていなくね?

 

セイラの共有予定表を見たが、有給をとった形跡も、どこか外に出ている形跡も無い。

体調不良か。

このタイミングで。

俺の最終出社日で。

 

僕はその日、普通にみんなに挨拶をして、普通に辞めた。

 

それから、セイラにメッセージも入れなかったし、もちろん、セイラからメッセージが来ることもなかった。

最終日に体調不良で休んだのが、僕が彼女から受け取った、一番のメッセージだった。

あっけない終わりである。

 

僕はこの件で、ずい分落ち込んだ。

どう気持ちを保ったら良いか、気力を持ったら良いか、わからなくなった。

だがありがたいことに、次の仕事が良い感じに見つかり、「セイラのおかげで、ステップアップに繋がる仕事を見つけられた」と考えるようになった。

新しい環境で新しい事を学び、充実した日々を送った。

 

そして、サプライズサプライズ、それからわずか半年後に、僕はこの会社に戻ることになった。

T君とセイラがいる、この会社である。

 

当時の上司からメールが来て、「新しくポジションを作ったので、ぜひmadajimaさんに」と言われた。

辞める前に僕のやりたかった事と一致していたポジションだった。

少し悩んだが、僕は受け入れた。

 

この時、仕事のことばかり考えていて、あまりセイラの事は考えなかった。

だが、いざ復帰初日が近づくと、考え始めてしまった。

彼女はまだ会社にいるんだろうか。

もう辞めたのだろうか。

オフィスでもしセイラと会ったら、何を話したらいいんだろうか。

 

が、そんな不安は無用だった。

復帰初日、T君とコーヒーを買いに行った。

「セイラはオーストリアに帰ったよ」

「っていうか、知らなかったの?」

「知らないのに、よく戻ろうなんて思ったな」

T君との会話を懐かしむヒマさえ無いほど、バカにされた。

 

「まあ、セイラと付き合わなくて良かったと思うよ」

「最近知ったんだけど、セイラ、社内の結婚している男の人と、不倫していたらしいよ」

「それも二回」

「おっぱいも豊胸手術しているって」

 

は?

え?

どういう事?

一切、知らなかったんだけど。

 

「いや、本当に俺も知らなかったんだけどさ」

「不倫していたのは、俺がまだ入社する前だし」

 

とんでもねえな。

俺は、とんでもねえ女性を好きになっていたんだな。

 

と、なると、「会社の人と会社の外で会いたくない」とセイラが言ったことが、かなり頷けてくる。

僕がデートに誘った時、その不倫の時のことが頭を過ぎったのかもしれない。

また、僕が辞めることになった時、僕が、「セイラにフラれたから辞めるわー」と、社内の人に言っていると想像されたのかもしれない。

それで廊下ですれ違った時、あまり良い表情をしてくれなかったのかもしれない。

 

セイラの件であった多少のもやもやが、晴れていくのを感じた。

うまくいかないのは、最初から避けられない結末だったんだな。

とはいえ。

セイラがいたおかげで、あそこまで仕事続けられた。

セイラがいたおかげで、仕事を辞めることができた。

辞めた後の半年間のおかげで、新しい経験をたくさん得た。

あそこまで仕事を続けられたおかげで、復帰のオファーをもらった。

キャリア的にはいい事づくめじゃあないか。

 

そして最近、T君がM子と付き合っている事を知った。

セイラの隣に座り、T君と同様、僕とセイラを繋げようとしてくれた、あのM子である。

僕とセイラの件で、T君とM子が仲良くなり、付き合うようになったのだという。

なんだ、知らないところで、他の人の役にも立っていたんじゃあないか。

 

今思えば、だけど、僕が復帰してから、T君が、僕に彼女ができるようやたら気を使ってくれるようになった。

T君が、恋活パーティに行きたい、と言ったのも、その一つのようである。

「人生で一度は、そういうものに行ってみたい」と言っていたが、半分は、セイラの事で負い目を感じていたから、僕に彼女ができるよう、遠回しに協力しようとしたんじゃないだろうか。

 

T君、お前まじで。

そのとぼけた顔の裏には、案外優しさがあったんだな。

別に、T君のせいでうまくいかなかったわけでもないのに。

いや、ちょっとはそうかもしれないけど。

なんにせよ、いつか、俺に彼女ができた時には、M子とダブルデートに行けると良いな。

 

それが、バンダナの子だと良いな。

 

と、いうことで、「銀座の恋活パーティに行ってきた」シーズン2を始めます。