madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

T君、お前まじで その4

これまでのあらすじ↓

オフィス内で、madajimaをジッと見てきていた金髪美女、セイラさん。

だが、とある日、T君の勝手な行動のせいで、殺意を持ってギロリと睨まれてしまった。

もしかして、嫌われた? 次のmadajimaの行動は。

  

セイラがゴジラになった事件から、1ヶ月が経った。

ながっ! あの事件から、そんなになんもなかったの? と思われるかもしれないが、あの事件から1週間経った後に、セイラが3週間の休暇をとって、オーストリアに帰郷していた。

 

ここで、T君の「早く誘えよ」とやたらめったらに言っていた理由がわかった。

休暇行く前に行っておけよ、とT君は思ったのだろう。

だが、そういう事情なら、そう言えば良いのに、と思った。

「セイラがしばらくオーストリア帰るから〜」と言った方が、「早く誘えよ」の連呼よりは、ずっと説得力がある。

T君が転職コンサルタントをしているのが、ちょっと信じられなくなるレベルだ。

 

だが、僕の意見では、3週間の休暇から戻ってきた後の方が、「休暇の話聞かせてよ〜」と誘いやすいと思った。

あの事件以降、セイラの「ギロり」が発動せず、「ジッ」に戻った、というのもある。

きっと、セイラの隣に座るM子が、「あれはT君が独断でやったことだから、madajimaには怒らないで。madajimaは軟弱者じゃないよ」とか言ってくれたんだろう。

 

と、いうことで、セイラがオフィスに戻ってきて数日後、メールでランチに誘った。

すぐにオッケーをもらい、その次の週に行くことになった。

 

何でも二度目は楽と言うが、今回も一回目と同様に緊張した。

当日の午前中、トイレに行きたくなる、なる、なる。

 

だが、そうやってトイレにたくさん行ったおかげかどうかはわからないが、普通にたくさん笑って、たくさん食べて、オフィスに戻って来た。

特に、共通のふりかけの話をした時が、一番アツかった。

好きな食べ物は一切合わなかったが、ふりかけはがっちり合っていたのが面白く、互いに笑い合っていた。

 

また、途中、会社の人とすれ違い、「え? この二人仲良いの?」みたいな顔をされたのが面白かった。

そうだよね。

俺たちお似合いではないよね、きっと。

でも、全然違うからこそ、数少ない共通点が輝いて見え、惹かれ合うんじゃないのかなあ〜?

ふりかけが、輝くんじゃないのかなあ〜?

 

また、最後に、俺の誕生日覚えてる? とセイラに聞いてみた。

すると、彼女は僕の誕生日と1日違いの日付を言ったので、単純に驚いた。

そこまで、覚えていたのか。

絶対完全に忘れていると思った。

「私の誕生日は覚えてる?」と今度はセイラが聞いてくる。

あー、12月17日でしょ。

「うそっ!」

覚えているに決まっているじゃん☆

もちろん、僕はドヤ顔を忘れなかった。

 

セイラの、あのゴジラの怒りはなんだったのか。

そう思えるくらい、楽しいひと時だった。

幸せな1時間のランチタイムだった。

だが、楽しすぎて、次のデートにつなげられるような会話をすることができなかったことが、心残りではあった。

 

まだデートは早いのかなあ。

もう一度ランチに行った方が良いのかなあ。

 

「早くデートに誘えよ」

そう言ったのは、もちろん、T君である。

「ランチにはもう行かなくて良いだろ。次もランチだったら、『あれ、友達って思われてんのかな?』って思われるよ」

 

セイラと二回目のランチに行った数日後だった。

バリバリの仕事中、T君が僕のデスクに来て、「madajima、大事な話があるんだけど、コーヒー行かね?」と真面目な顔で言ってくるので、一体何の話かと思ったら、この話だった。

 

僕たちは、スターバックスに向かって行った。

 

正直さ、T君。

俺、自信ねえよ。

昨日たまたま、エレベーターの前で、セイラがお客さんと話しているの見たんだ。

ハイヒールで、プロフェッショナルな雰囲気を持って話しているセイラを見て、「俺、こんな金髪美女と、本当に付き合えるの?」と考えちゃったんだよね。

最近、トイレで自分の姿を鏡で見ると、なおさらそう思っちゃうし。

純日本人らしく、顔の彫りも深くないし、髪も黒くて若干天パー気味。

俺で良いの? こんな俺でセイラとやっていけるの?

 

「ふーん」

僕が、自分の不安を打ち明けると、T君は納得したような、納得していないような、とぼけた顔をした。

「確かに、髪は切った方が良いと思うけど、madajimaは基本的にはかっこいいと思うよ」

あ、ありがとう。

「とにかく、週末デートに誘った方が良いよ。ランチはダメだから」

そ、そうか。

 

T君があまりに断定的な言い方をするので、それを信じることにした。

「多分」とか、「〜と思う」とか、そういった単語が、T君から一切出てこなかったのは、どうせ、M子が絡んでいるんだろう。

今回だけではないが、セイラがM子に何かを言って、それをM子がT君に言って、そしてそれをT君が僕に言って、それから、僕が言ったことが、逆の順番でセイラに伝わっているような、そんな感じがした。

だから、言われた事に従うのが、吉だと思った。

 

なお、この後、僕は自分のデスクに戻った訳だが、周りの人に「T君と大事な話って、一体なんだったの?」と聞かれたので困ってしまった。

セイラのことを言うわけには、もちろんいかない。

ああ、T君、僕に「madajimaは基本的にはかっこいい」と伝えたかったみたいで。

そう答えると、首を傾げられた。

 

さて、とにかくそういうことで、セイラを週末デートに誘おう。

だが、何に?

映画かな?

映画だな。

ゴジラかな?

いや、ゴジラは違うか。

 

そんな感じで、映画をバーっと見ていくと、ちょっと怖そうなドキュメンタリー映画があって、随分僕の気を引いた。

若くして死んだアメリカ人スター歌手の話で、予告編を見たが、自分一人じゃ絶対行かないような、ドラッグとかが絡んだ怖そうな物語である。

だが、セイラと一緒なら。

セイラが隣にいると、妙に安心感を持って見れるんじゃないかな。

よし、これに誘おう。

これが、僕がセイラと一緒にやりたいことだ。

 

僕はテンションが上がり、LINEを立ち上げた。

ドキドキしながらセイラとのチャット画面を開き、予告編のリンクを貼って、「これセイラと一緒に見に行きたいんだけど、どう?」とメッセージを送った。

 

メッセージが返ってきた。

内容は、シンプルだった。

「ごめん、私、仕事の男の人と、仕事の外で会いたくないから」

 

えっ。

ええっ。

えーーっ!

 

僕は、メッセージを何度も読み返してしまった。

「会社の男と会社の外で会いたくない」?

 

ちょっと待て、セイラってそういう考えの持ち主なの?

俺って、単なる仕事の人だったの?

そういう風にしか見られていなかったの?

いやいやいや。

ランチで楽しく話していたじゃん。

普通に、自然に、話していたじゃん、俺たち。

「仕事なので話している」感、微塵にも感じられなかったですよ。

距離感も壁も、何も無かったですよ。

というか、仕事の話、全くしていないし。

ゲームとか、ふりかけとかの話しかしていないし。

あと、セイラがお客さんと話している時と、俺と話している時、テンションというかノリというか、全然、全っっ然違いましたじゃないですか!

すげえ、くだけた感じで話してたじゃないですか!

 

僕は、返信を書く上で、いろんな事を考えた。

やはり、自分はセイラにふさわしくないのだろうか。

「仕事の人だから」というのは簡単な言い訳であって、単純に、僕と週末に会いたくないのだろうか。

でも、ランチで見せてくれたあの笑顔とかは、本物だよな。

普通に、自然に、笑っていたよな。

あれを信じられないのなら、何を信じたらいいのか、わかんねえよ。

本当の事を、知りたい。

セイラが何を思っているのか、知りたい。

 

辞めよ。

仕事、辞めよ。

自分自身が「仕事の人」ではなくなることで、セイラができる言い訳を無くして、本当の事を聞こ。

 

と、いう事で、僕は返信を書いた。

「あ、じゃあ、ちょうど俺、仕事辞めようと思っていたから、辞めた後にまた誘うわ!」

 

返事は、返ってこなかった。

  

続きます。