madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

T君、お前まじで その2

これまでのあらすじ↓

オフィス内を歩いていると必ずジッと見てくる金髪の美人、セイラのことが気になっていた、madajima。

ところがある日、T君とM子の策略のおかげで、セイラとランチに一緒に行くことになった。

まともに話したこともないのに、金髪なのに、美人なのに、果たして一体どうなるのか?

 

一緒にランチに行く、当日になった。

この日の午前中、緊張しすぎて仕事が手につかなかったことを、よく覚えている。

普段は1、2回しか行かないトイレも、4、5回は行った。

とにかく、尿意が止まらなかった。


この日までずっと、1時間のランチタイムで、一体何について話すのか、頭の中でひたすらイメージトレーニングをしていた。

セイラの好きなゲームのこと、セイラの出身とか、そんな感じのこと。

とにかくあちらに喋らせるのだ。それが作戦だ。

僕は緊張していて、喋られる気がしないからね。

 

それと、連絡先も聞いちゃおう、と思っていた。

 

いや、もうね、ぶっちゃけるとね、十中八九、セイラは僕に気があると思っていましたよ、ええ。

気がないのに、じーっと見ますか? 見ないでしょう?

セイラに気がなかったら、T君は、僕がファイナルファンタジーのスタッフだったことをわざわざ彼女に伝えますか? 伝えないでしょう?

セイラの方からT君に「あの、背が高い日本人、madajimaっていうの? いっつも仲良いなら、私を繋げてよ」みたいな会話が、前にあったんじゃないの? あったんでしょう?

べ、別に、自意識過剰とか、そんなんじゃないですよ。

論理的に、あくまで考えていますよ、ええ。

 

T君のおかげで、美人と仲良くなるチャンスを得たのに、下手に仲良くなりすぎて、ただの同僚になるのが怖かったため、早めにLINEを交換しようと思っていた。

 

さて、ランチの時間になり、エレベーターの近くでセイラと落ち合った。

身長が高いため、目が合う時も近さを感じるようで、ドキドキする。

また、目が大きくて眼力があるため、緊張する。

もはや、尿意を感じる余裕すらなくなった。

 

ランチ、行きたいところある? と僕が聞く。

「どこでもいいよ」とセイラが言う。

ちょっと行ってみたいところあったんだよね、と僕が言って、先導するように歩いていった。

 

会話の方は、セイラが色々と質問をしてきてくれた為、そして僕の話に興味を持ってくれた為、だいぶ盛り上がった。

だが、しばらく歩き、「ちょっと待って、まだ先なの?」とセイラに言われた。

気付いたら、目的の場所を通り過ぎてしまっていた。

俺、二つのことは同時にできないんだよね、と言うと、セイラは笑ってくれた。

 

良い感じの雰囲気のレストランで食べ始めた。

僕は、イメトレ通り、質問をセイラの方に向けた。

 

っていうか、どこ出身なの?

オーストリアの、グラーツってとこ」

あー! 知ってる! 日本代表元監督の、イビチャ・オシムって人が昔グラーツのサッカーチームを率いていて・・・。

「あ、そうなの? っていうか、サッカー好きなんだ? 私、ドイツワールドカップ見に行ったよ。父さんと一緒に」

まじでー! 良いなあー!!どうだった?

「あんまり覚えていない。興味ないから」

はああ? 俺は、日韓W杯がきっかけで英語の勉強を始めたんだよね。マイケル・オーウェンと話したくて。

「あ、そうなの? 私、大学はリバプールだよ」

はあああ? どういうこと? プレミアリーグ、生で見てたりしてた?

「いや、一切興味なかったし」

はああああ?

「あ、でも、フェルナンド・トーレスは好きだった」

あ、そうなの? おれさ、サッカー部でフェルナンド・トーレスみたい、って言われてたんだよ。シュートの決め方とか。

「いや、サッカーのことは知らない。ただ、私は彼の顔が好きだっただけで」

いや、ほら、背とかさ、体型も似てたし。顔は似てないけど。

 

僕は、彼女の大きな瞳にグイグイと引かれる感覚がした。

今まで、ワールドカップや、イギリス留学など、僕にとって本やテレビの中だけだった世界を、彼女は生きてきている。

そこに、尊敬と魅力を感じた。

アムロがセイラさんと話すときもこんな感じだったのか、と思ったりした。

 

それから、音楽の話や映画の話といった、ごく普通のことを話して、もちろん、そんなごく普通の話にも常にドキドキしていたのだが、お会計になった。

それぞれ1080円で合計2160円だった。

だが、僕には80円以上の小銭が無い。

レジで互いに千円ずつ出し、それからセイラが200円出して、お釣りをもらった。

ごめん、後で払うわ、と僕は謝る。

セイラは数字に弱いのか、「え、何円? 私、何円多く払ったの?」と聞いて来る。

80円。と僕は申し訳なさそうに答えた。

すると、彼女はぷーっと吹き出した。

「そんなの額、どうでもいいから」

うわー。

うわーー。

なにそれ、かっこいいーー。

惚れちゃうわーー。

 

僕の周りの女友達は、「男が多めに払うべき」みたいな考えの人たちばかりだった為、「80円くらい気にすんなよ」という態度を、女の人に自然にされるのは、非常に新鮮だった。

その女友達に、「最初のランチで、80円多く出してもらった」と話したら、「ありえなーい!」と言われることだろう。

まあ、でも、よく考えてみたら、80円くらいどうってことないからね。

80円を多く払うくらい、それが男子だろうと女子だろうと、関係ないからね。

 

実際に時間を共に過ごすのは初めてだったが、僕はグイグイ惹かれていた。

ええわ。

今まで会ったことのない感じの女性。

セイラさん、ええわ。

 

帰り道、ちょうどオフィスに着く前、「誕生日はいつ?」と聞かれた。

俺は10月19日。そっちは?

「12月17日」とセイラは答えた。

この頃はまだ7月あたりだったため、互いの誕生日まで時間はある。

とはいえ、「誕生日を聞くってことは、気があるってことでしょー」と僕は決めつけ、その日のうちに、「さっきランチで教えてくれたアーティストの名前、LINEで送って」と社内メールを出して連絡先を交換した。

 

こうして、当初の目的を全て達成した。

思いがけないほど、全てが順調である。

 

後日、T君とコーヒーを飲みながら、話していた。

「もうLINE聞いたんでしょ? やるじゃん、madajima」

うるせえよ。っていうか、なんで知っているんだよ。

「M子が言ってた。あと、セイラが、『madajimaがあんなに面白い人だとは思わなかった。ジョークとか言わない人かと思ってた』って言ってたって。よかったじゃん」

うるせえよ。

 

僕は正直、浮き足立っていた。

このまま行けば、こんな美人なオーストリア人が、僕の彼女になるのは間違いない。

周りからうらやましがられること、間違いなしである。

 

「せっかく英語できるんだから、金髪美女と付き合っちゃえよ」と友人に言われていたことを思い出していた。

その日が来ることも、近いだろう。

 

全ては、T君とM子のおかげだ。

いや、俺の日頃の行いのおかげかな。

まあなんにせよ、ありがとな、二人とも。

 

が、それから突然、全てが順調でなくなった。

何より、僕の浮き足のおかげで。

そして、T君とM子のおかげで、である。

 

続きます。