madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

T君、お前まじで

 

最初にT君と会ったのは、僕が今の会社に入った初日だった。

T君もちょうど1ヶ月前に入社していて、同期みたいなものだね、今度ランチでも行こうぜ、という流れに。

それから、たまにランチに行ったり、トイレで会ってああだこうだ話したり、みたいな、普通の同僚の間柄になった。

この時の印象は、今と変わらない。

姿勢がよくて、かっこいい奴だな。

ずいぶんと、とぼけた奴だな。

 

そんなこんなで、入社して、半年ほど経った時だった。

僕が、自分のデスクから、水のボトルサーバーや冷蔵庫がある休憩スペースに歩いて行くときに、ある女性社員が、僕のことをやたら見てくるようになった。

他の人に混じって座っているが、金髪で、背が高くて、目が大きい事もあり、僕のことをジーッと見てくるのが、よくわかる。

他の人はモニターに集中しているのに、一人だけ視線を横にし、こっちを見ている。

面識ないのに。

名前すら知らないのに。

 

どうしよ、仕事で関わりないから、知らない。

誰だろ。 

でも、同じ会社の人に、「あの女の人、めっちゃ見てくるんだけど、誰?」とは聞きづらい。

「勘違いだろ? 自意識過剰かよ」とあしらわれるのがオチな気がする。

 

とはいえ、金髪で、背が高くて、目が大きい、そんな美人が自分を見てくるとなると、気になってられない。

だからと言って、金髪で、背が高くて、目が大きい、そんな美人に話しかける勇気も湧かない。

 

T君かな。

T君に相談するしかないのかな。

T君、顔広いし。

 

そんなある日、僕はT君と、エレベーターでばったり会った。

僕は遅めのランチに行こうとしていて、彼は近くのスターバックスに行こうとしていた。

 

「ランチ、どこに行くの?」とT君が聞いて来る。

あの、あっちの方のすた丼。

「え? ここら辺、すた丼なんてあんの?」

1キロくらい歩くけどね。

「はあ? そんな遠くまで行くの?」

あ、ちなみに、その近くにスタバあるから、そこまで来なよ。

「はあ?」T君は、苦笑いをした。

「いいよ。サボりたい気分だったし」

 

歩きながら、僕たちはいつものように話し始めた。

お互い仕事内容も全然違うし、デスクも離れているため、それぞれに起きたことや、それぞれの周りの人たちについて、話し合っていた。

そうやっているうちに、だんだんと、スタバも見えて来た。

すると、T君が話を変えた。

「madajimaは、オフィスで気になっている女の子とか、いるの?」

 

うわー、聞いて欲しかったー、それ。

T君に、聞いて欲しかったんだよー。

なんて、言えない。

僕は、下唇を噛み、言葉を探していた。

あの子の事を言ったら、「やたら見てくる女の子がいてさ」なんて言ったら、自意識過剰だと思われて、T君に嫌われるかもしれない。

だが、あの美人が気になって仕方がない。水もまともに飲めない。

頭で考える先に、口から言葉が出てきた。

 

いるよ。

「おー! まじで! 誰?」

あのさ、あの窓際の席の、金髪で、背が高くて、目が大きい子。

「え? 誰? どの席?」

T君が、自分の席から後ろを向いて、一番奥の人。

「あー、セイラ!? それ、セイラ? え、まじで?」

え? セイラっていうの? ガンダム

「かわいいよね、セイラ」

ガンダムの方のセイラさん?

ガンダムとか知らないんだけど」

彼女、どこの国出身だか知ってる?

「知るかよ。本人に聞けよ」

きけねーよ。今まで話したことすらないのに。

「へえー。セイラねえ。かわいいよね」

うん。たぶん。

「あー、そういえば、セイラはゲームとか好きだよ。madajimaは前、ゲーム会社いたんだっけ」

え? ゲーム好きなの? どんなゲーム?

ファイナルファンタジーとか、そういう系?」

おおおお! まじでえええ!

「は? どうしたの?」

いや、おれ、自分の名前、ファイナルファンタジーのスタッフロールに載ってるからさ。

「はあ? まじで? 嘘でしょ?」

本当だよ、ホント。

「いいじゃん、それで口説けるじゃん」

え? いやー、それは。

「話しかけちゃいなよ」

 

突然、僕には、未来が輝いて見えた。

輝きすぎて、ニヤケが止まらなかった。

あの美人と仲良くなれるかもしれない。

ファイナルファンタジー効果で、仲良くなれるかもしれない。

そうしたら、ジーっと見られても、笑顔で返せばよくなる。

あの気まずい感じも、なくなる。

気まずくなるどころか、お近づきになり、やがては。。。

むふふ。

 

情報は揃った。

あとは機を見て、話しかけるだけである。

エレベーターで、偶然会ったりするのだろうか。

そう言う時に、ふと、ファイナルファンタジーの話とかすればいいのかな。

それとも、飲み会をセットアップしてもらおうかな。

 

だが、そんなことを考える必要は、すぐになくなった。

 

T君と話してから数日後の夕方、隣の席の上司の電話が鳴ったが、上司は不在にしていたので、僕が代わりにその電話を取った。

内線だったので、電話に名前が載っている。

女性社員の、M子だった。 

M子とは、仕事で関わったことが少しあったので、面識がある。

そして、M子が、セイラの隣に座っていることも、知っている。

 

「もしもし? 上司さん、いないんですか?」

あー、今ちょうどいないっすねー。

「あ、madajimaさんですか? これちなみに」

そうっすよ。

ファイナルファンタジーのスタッフロールに名前載っているって、本当ですか?」

はあああ?

「本当なんですか?」

何だよ急に。っていうか、何で知ってんだよ。

「T君がね。って、別にいいじゃないですか、そこは。で、本当ですか?」

 

T君、お前まじで。

何で、M子に言ってんだよ。

ってことは、隣のセイラも知っているのか?

思考が追いつかないうちに、電話の遠くから声がした。

「本当に、本当なの? どのファイナルファンタジー?」と言っているのが聞こえる。

セイラである。

「madajimaさん、どのファイナルファンタジーか、ってセイラが聞いてますよ」とM子が言う。

えー。

呆れた声を出してみるが、内心は緊張している。

「っていうか、直接話してよ!」とM子がセイラに向かって言うので、さらに緊張する。

だが、セイラは何も言ってこない。

電話の向こう側で何が起きているかは、僕には見えない。

すいません、M子さん、あの、用事は。上司さんは、とりあえずいないんですが。

「あー、ごめんなさい、邪魔しちゃって。でも、あとでセイラに話しかけてくださいね、ファイナルファンタジーのこと」

 

電話が切れた。

一体、これは何だったんだろう。

よくわからん。

よくわからん、が。

これはチャンスである。

いや、これをチャンスにするしかない。

 

僕は胸が高鳴った。

新しくメールを立ち上げ、セイラの社内アドレスを探す。

少し悩みながら、本文を、できるだけカジュアルに書いた。

 

俺がファイナルファンタジーのスタッフロールに載ってるって、信じてない感じ?

証拠見せるからさ、今度ランチでも行かない?

 

返事は、数分後に返ってきた。

「いいよ。私の予定表見て、来週いつでも空いている時間に予定入れて」

 

うーわ。

まじで。

行くのかよ、ランチ。

金髪で、背が高くて、目が大きい、美人なドイツ人と。

あの、セイラさんと。

 

続きます。

 

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