madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

ギリギリ

もうすぐギリシャに行ってくる。

そこで、髪を切りに行くことにした。

あっちの、美しいビーチと美しい美女のためである。

 

僕がいつも髪を切りに行くのは、電車で40分ほどかかるところだ。

乗り換えが一回あるし、少々面倒だけど、色んな美容室を試した結果、ここがダントツで良いので、ここにしている。

 

しかし、今回、すでに体内時計がギリシャになっていることもあり、電車を乗り過ごしてしまった。

ただ、電車に乗って、乗り換え案内アプリを見ていると、気付いたことがあった。

アプリでは、乗り換え所要時間が5分となっているのだ。

え? どう言うこと?

普通に歩いて5分かかるなら、じゃあ、走れば1分じゃね?

やっベー、発想が、マラソン発祥の地、ギリシャっぽくなってるー。

 

調べてみると、乗り換え前の電車が到着した1分後に、乗り換え後の電車が出発する。

この1分後の電車に間に合えば、遅れを取り戻し、時間通りに到着することができるのだ。

 

やるっきゃない。

普通は5分かかる乗り換えを、1分でやるしかない。

電車の扉の前でスタンバイをしている僕の顔つきは、スパルタの兵士そのものだったに違いない。

 

プシューッと電車が止まり、扉が開いてすぐ、僕は上りエスカレーターを駆け上った。

途中まで順調に上がるも、途中で、親子が僕の道を塞いでいた。

親が左側、子が右側に立ち、手を繋いでいる。

さらに、子供は右手をエスカレーターの手すりにかけている。

僕が通る道を、とうせんぼをするかのように、完全に塞いでいる。

ふふふ、だがな、スパルタの兵士にとっては、そんなものどうってことないのである。

僕は、子供の右手を、エスカレーターの手すりから剥がしとろうとした。

もちろん、スパルタの兵士と言えども心は痛んだが、それしか方法がなかったのだ。

だが、子供は粘った。

なかなか右手が手すりから離れない。

僕は「すいません、すいません」と頭を下げながら、少々強引に、子供の右手を手すりから引きちぎるようにした。

子供はバランスを崩し、後ろに倒れそうになった気がしたが、気にしないことにした。

親が手をつないでいるから、大丈夫なはずである。

それから僕は、段飛ばしでエスカレーターを上り、通路をかなりのペースで走って、プラットフォームに着いた。

電車はすでに到着していたが、ドアが閉まる数秒前に電車に入ることができた。

そして、目的地に着き、いつものように髪を気持ち良く切ってもらいましたとさ。

あとは、ギリシャに行って、美しいビーチで美しい美女と、アハハ、ウフフ、とするだけである。

めでたし、めでたし。

 

だが、ふと、「ああ、しまった」と思ってしまった。

エスカレーターの子供のことではない。

僕の、運のことだ。

ギリギリの運である。

 

僕がギリシャから日本に帰るスケジュールが、かなりギリギリになってしまって、ここ数日気が気でない。

宿泊先のサイロス島からアテネにフェリーで行き、そこから飛行機に乗る、という流れだったのだが、予約していたアテネ行きのフェリーが急遽キャンセルになってしまい、空港に着くのが出発の30分前、という事態になったのだ。

飛行機が飛ぶ2時間前に空港に着くのが常識なのに、30分前は、かなりリスキーである。

飛行機を乗り逃さないよう、それこそマラソンランナーのように空港内を走っていく必要がある。

エスカレーターの道を子供が塞いでいたら、今度僕は一体何をしでかすかわからない。

 

だけど、まあ、乗り遅れたなら乗り遅れたで、もう一日、ギリシャを満喫するのも良いのかな、と思ってきた。

あれだし、せっかく、髪を切ったんだし。

あっちの、美しいビーチと、美しい美女のために、切ったんだし。