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madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

嫌われていると思う勇気

地元から東京に戻る新幹線の中だ。
ちょっと疲れて眠い中、通路側の席を見つけ、座り、ほっと一息つくと、窓際に座っていた若い兄ちゃんに、ぎろりとにらまれた。
あらら。そんなに座ってほしくなかった?
足を組んで放り出し1.5席分占領している。耳にはイヤフォンだ。
だが、他の席は埋まっていて、座れるのはここくらいしかない。
あまり良い気持ちはしなかったが、そのままそこに座り、音楽を聞きながら本を読み始めた。
読んでいた本がおもしろく、くすす、と時折笑いがこらえきれなくなる。
すると、再びぎろりと見られた気がした。
ああ、怒らせちゃったかな、と若干気にしてしまう。
どうしてそんなにイライラしているのか。なかなか想像が及ばない。
僕は、顔が気に入らない、と言って、よく腕にパンチをしてきた中学校の友達のことを思い出した。
この窓際の彼もそんな感じだろうか、と不安になる。
申し訳ないが、僕の顔は今、どうしようもできない。化粧道具も持っていない。
すると、彼がボリュームを上げた。僕がイヤフォンをしていても音が聞こえるくらいに、だ。
彼はイヤフォンを耳から外しもした。そうすると、さらに音が漏れる。
それからイヤフォンをじっと見つめ、音漏れしていたのをしっかり確認したかのように、耳に戻した。
僕のことがうざいがために、わざと音漏れをさせているのだろうか。
僕の顔が気に入らないと、昔は腕パンチ、今は音漏れ攻撃なのか。

しばらくすると、新幹線が途中駅に着くアナウンスが流れた。
すぐに、窓際の彼はがさこそと、降りる準備をし始めた。
お、じゃあ窓際に行けるな、と僕は喜んだ。そしてすぐに、あ、と焦る。
もしかしたら、去り際に腕パンチも食らうかもしれない。
そうしたら、文字通り、ダブルパンチだ。
だが、そんな心配もよそに、彼は細い足でスルッと僕の前を通り抜け、自動ドアを出ていった。
すぐに、僕はお尻を浮かせて窓際にスライドする。
ラッキーだな。音漏れが無くなり、夜景と安らかな眠りを手に入れたぜ。
が、それは間違いだった。
カタカタカタ、とノートパソコンのキーボード音が背後から聞こえ始めた。叩いている振動も感じる。
たまにガーッとタイプされて、しばらく止むと、またガーッとなる。
僕はすぐにイライラし始めた。
ああ、とここで全てを悟った。窓際の兄ちゃんがイライラしていたのは、背後のキーボードで、僕の顔ではなかったのだ。
兄ちゃんが音漏れをするくらい音量を大きくしていたのは、背後がうるさかったからだろう。
僕が通路側の席に座った時にぎろりと僕をにらんだのは、「あ、そっちに移動しようかな、と思っていたのに」と思っていたのかもしれない。
その通路側の席には、乗車してきた優しいおじさんが座り、すでにぐっすりと寝ている。
そこに座ったままでいれば、と少しだけ悔しくなった。

みなさん、公共の場では、イヤフォンの音漏れ、キーボード操作の振動に気を付けましょう。
気が付かないうちに、あなたは他の人の気分を害しているのかもしれません。
「自分は嫌われているかもしれない」と思う勇気が必要です。
自分の顔が気に入らないと思われているかもしれない、腕パンチされるかもしれない、という心配は、一切しなくてもいいですが。