madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

天気予報、晴れ男

僕は尋常じゃない晴れ男だ。
もはや晴れ男の常軌を逸している。だって、僕が「この日絶対晴れてほしいな」と思うと、晴れるのだから。
例を出そう。とある秋、僕は女の子と山道をドライブする計画を練っていたのだが、あいにく、その日は80%の雨予報だった。
もし雨が降ったら、山道を走るのは若干危険だ。年に数回しか車に乗らない僕は急な下り道カーブとかできる自信がない。
ただ、天気に関しては、どこから来るでもなく自信があった。心配するな、絶対晴れる、絶対楽しい一日になる。カーブはわからないけど、天気は絶対大丈夫。
当日、新潟の家を出たときは曇りだった。「あたし晴れ女だからねー」とその女の子が言っていたが、僕はこれが自分のおかげだと信じていた。言わなかったけど。
天気が変わらぬまま市街地を抜け、山道に入り、とあるトンネルを抜けると、雨がザーッと降り始めた。結構強い。こ、これが80%の実力か。
それまで楽しかった車の雰囲気に、沈黙が流れる。僕は、80%の予想外の強さにショックを受けていた。でも、やっぱり僕は自分を信じていた。おれは晴れ男だ。じきに晴れになる、降水確率が何%だろうと。下り坂カーブは怖かったけど。
その天気の自信とは裏腹に雨が強くなり、視界が悪くなって、あんまり会話に気がとれなくなったため、「CDを流そう」と僕が提案した。助手席の女の子が「りょうかい!」と元気よく言い、互いの知っているテレビドラマのCDを入れ、流した。そして、その曲について話したりして、雰囲気はまた明るくなった。
すると、空がそのCDを聞き入るかのように、雨が弱くなってきた。
僕はワイパーの回転数を少なくし、さらに少なくし、そして、ワイパーが必要なくなるほど弱くなった。このとき、ワイパーじゃなくて間違えて洗浄液を出したりもした。
雨が止んでから、ぱっと時計を見ると12時半頃になっていて、「そろそろご飯だな」と言い、それからすぐに見つけた小屋みたいなところで車を停め、定食と、あほみたいにうまいパンプキンアイスクリームを食べた。めちゃくちゃうまかった。もし雨が降っていたら、ここで車を停めようという気にはならずに通り過ぎ、そのパンプキンアイスクリームも味わえなかっただろう。
僕がそれを説明すると、女の子は「わたしすごいねー、80%なのに」といまだに彼女自身のおかげだと思っていた。僕のおかげなのに。
山を抜け、市街地が見えてきた。雨はまったく降っておらず、もはや降水確率のことなど語らなくなった。僕も女の子も、初めて見る街に心を躍らせている。
しばらく走ると、海が見えてきた。「おー! すげー!」と彼女のテンションは上がっている。
休憩がてら、誰もいない寒めのビーチに適当に駐車して、外に出た。
僕らは同時に外に出て、ものすごいものを見つけてしまった。
青空である。
海の遠くに、青空があったのだ。隙間から見える程度のものではなく、こっから雲、こっから青空、というふうにくっきりと分かれていて、不思議な、けれども綺麗な空を作っていた。また、その青空がこちらに近づいているような気がして、神秘さが増していた。
「いやー、80%、倒しちゃったぜ!」と、僕の中で一番ハンサムな言い方でつぶやいた。きまったな、と心で思っていた。
ところが、「すげー! あたしやっぱりすげー!」とテンションが上がりっぱなしの女の子は依然として自分の手柄のように言っていた。いや、だから、おれのおかげだって。
余談だが、ここらへんで虹とか出ていれば、ロマンティックな感じになってキスとかでもしちゃうんだろうが、そこらへんの運は一切持ってないので、そのまま何も起こらずに僕らは家に帰り、数週間後彼女はオーストラリアに旅立ち、その子と僕は今でもただの友だちのままである。
 
さて、僕の晴れ男っぷりがわかったところで、本題だ。
背景から話そう。僕は先週末、ハワイ出身の女の子と横浜でデートをした。
若干寒かったが、天気は快晴で、ランチも最高においしくて、会話中はたくさん笑って、それこそ、僕の晴れ男エピソードを始めとした自慢の鉄板ネタを披露したりして、楽しくて楽しくてたまらず、また、次は豊島園に一緒に行くことすら決めて、すべてはうまくいっていた。
ただ、一つだけ後悔があった。
元同僚である彼女とはこれが2回目のデートで、また、ハワイ出身の彼女は厳密にはアメリカ人にも関わらず、僕に告白されるのを待っているところがあったため、僕は一緒に夜景を見ている良い雰囲気の中で、告白しようかな、と思っていた。
日没後、港の見える丘公園に行き、綺麗な夜景を見て、ここで告白しようかな、と思ったが、彼女が「私、目が悪いんだよね、なんか光がはっきり見えない」と笑って言ったため、なんだか雰囲気が失われたと感じた僕は、タイミングを失ってしまった。
また、帰り際も、同じ駅で違う電車に乗るとかなら、ハグとかするタイミングを作れて良かったのだが、彼女が電車に残り、僕が電車から出てお別れ、という状況だったため、悩んだ末、「じゃあ、気を付けて」と僕は手を振って別れることしかできなかった。
その直後、エスカレーターに乗りながら僕は「あんな良い雰囲気の一日の最後に、手を振り振りでお別れはないな、ないよな……特にアメリカ人には……」と激しく後悔した。
デートの翌日17日の日曜日の夜、「もう何が何でも告白しよう」と思った僕は、「豊島園、23日土曜日に一緒に行こう」と彼女にメッセージを送った。
すると、次の日の朝、メッセージが返ってきた。「天気予報だとその日雪なんだよね。。。私、今日みたいに雪が降ると、外に一歩も出たくないから、来月6日にしない?」
ずーん、とした。このメッセージを見た瞬間、一気に彼女に対する熱が冷めていくのが感じた。それこそ、自分の心の中に雪が降ったようだった。
確かにその日は、多くの雪が東京で降って、電車が全然動かなく、皆が雪を嫌った日だった。彼女はもしかしたら朝寒い中待ちぼうけを食い、嫌な思いをしていたのかもしれない。
それでも、それでも……。
オレがいれば晴れるにきまってるじゃん……。
オレがいれば、オレが願えば、雪なんて吹き飛ぶにきまってるじゃん……。そういう話横浜で話したじゃん……。80%倒したことだって言ったじゃん……。
まあ、メッセージでそんなことを言っても信用されるわけないため、当日天気を見て2月6日にするか決める、ということで話がついた。
それから僕は毎日天気予報をチェックしていた。晴れるといいな、晴れるといいな、と願いながら天気予報アプリを開くも、金曜日の夜になっても、土曜日の雪マークは変わらなかった。
ついに土曜日、当日になった。が、雪は降っていない。天気予報を見ると、午前中は10%、午後から50%の雪予報だった。
今日の予定、どうしたものか、と僕は悩んだ。午前9時頃だ。
「おれの晴れ男っぷりと天気予報、どっちを信じる?」とふざけたメッセージを送るかな、それとも「なんか天気大丈夫そうじゃない? 豊島園行かない?」とやんわり聞くかな。
結果、僕は、どちらの選択肢も選ばなかった。
メッセージを何も送らなかったのだ。また、彼女からメッセージも来なかった。僕は、漫画喫茶でひたすら弱虫ペダルを読んでいただけだった。
なぜ? なぜ僕はメッセージをしなかったのか?
なんかもう、会う気が失せたのだ。
僕は、天気がなんだろうと、彼女に会えればそれでよかった。僕が大した晴れ男じゃない、雪は倒せない、と証明されたって、彼女とまた楽しく話せればそれでよかった。
だが、彼女はそういうふうに思っていない、と考えると、なんかこう、めんどくさいな、と思ってしまった。
月曜日の段階で土曜日の天気予報など、当たる確率の方が低い。予報が変わることなんていくらでもある。でも、彼女にとって、雪の嫌なイメージが僕よりも完全に勝ったのだ。それが、ショックだった。晴れ男のプライドとか、そういうのではなく。
正直言うと、これまでの2回のデートで、僕らは両想いだとほぼ確信めいていた。その確信に至る理由は数あるけど、最初のデートは僕が、2回目は彼女が誘ったことが何より簡単にそれを物語っている。
彼女と初めて話したとき、僕のような男じゃとても付き合えないな、と思っていたから、その、互いにアプローチしている感覚がうれしくてたまらなかった。
だが、天気予報、たかが天気予報、降水確率80%とか言ってるくせに全然降らないほど信用ならない天気予報ごときのせいで、そのうれしい想いが自分から離れていくことを感じたとき、「この子は違うんじゃないか」と思ったのだった。
 
昼ご飯を食べても弱虫ペダルをまだ読んでいた午後2時ごろ、たまたま友だちのショーンから「最近どう?」と連絡が来た。
「相変わらず女に苦しめられてるよ」
「まじで? 実はおれもなんだけど! これは飲むしかないな!」
外を見て、まだ雪降ってないんだな、と気付き、少し考えたあと、僕は「飲むしかないな!」と答えた。女性経験豊富な9歳年上の彼は、この一連の天気騒動に関して最高の相談相手だった。
僕たちは渋谷でミートパイを食べていた。
「考えすぎだろ」
ショーンは何よりも先にそう言った。
「聞いてる限り、彼女がお前のことが好きなのは間違いないから。そこは信用していいと思う。まあ、今から来月6日まで3週間も待たせる、っていう日本人女子にありがちなめんどくささはおれも嫌いだけど」
ショーンの正直な感想に感謝しつつ、僕は再び晴れ男ストーリーを披露しながら笑いを起こし、この日まだ雪が降っていないのは自分のおかげだ、と主張して、ミートパイの店を出た。
「うー、さむ!」いつもより人通りの少ない渋谷でショーンは言う。「正直、そのお前の彼女、ハワイ出身の女の子におれは賛同だわ。こういう寒さだと、あんまり外に出たくない」
ここで僕は思った。
ショーンは、そして、たぶんだけど、これを今読んでる人たちも、「それで怒るの?」と僕に思っていたんだろう。
ハワイ人の彼女は、他のハワイの人がどうかは知らないが、自分の意見をまっすぐ言うタイプだ。「雪の日は外に出たくない」というのは心の底からの考えなんだろう。
問題は、それを僕が受け入れるかどうかなのだ。
新潟の豪雪地帯出身の僕は、寒いということに抵抗を覚えない。むしろ、寒いのを心地いいとか、気持ちいいと思うくらいだ。「デートするとしたら、どの季節ですか?」と聞かれたら、間違いなく「真冬」と答えるだろう。
だが、彼女は違うのだ。生まれたところも違うし、体つきも違うし、肌の色すら違って、もちろん考え方も違う。
今までのデート2回では気にしていなかったそういった違いが、ちょうど今「苛立ち」として表面化しただけなのだ。そんな違いを、僕がただ単に受け入れられなかっただけなのだ。
「若さゆえの過ちというやつかな」
僕の中のシャア・アズナブルがそう言っている。
自分が相手との違いを受け入れられなかったら、あちらが受け入れてくれるわけがない。
そうい受け入れる姿勢の無い関係だったら、そのハワイの子だけではなく、そもそもどんな女性ともうまくいくわけがないのだ。
 
気象庁のみなさん、いつもお世話になっております。
そして、いつも天気予報、ありがとうございます。
悪天候の予報で僕が晴れを願ってしまうと正確性が一気に下がってしまいますが、それ以外は大体オッケーだと思います。
それはさておき、今回は、あなた方の2016年1月23日の雪の予報によって、僕は多くの事を学ぶことができました。その点、本当に感謝しきれません。予報は外れましたけどね。
ハワイアンの女の子とこれからどうするか、僕はまだ決めていませんが、ただ、今回学んだ教訓は、絶対に大切にしたいと思います。
それと、ひとつ聞いていいですか。
僕の心の天気予報、どんな感じでしょう。
これも、僕が願えば、晴れるんでしょうか……?