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madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

オフィスの、背の高い、おしゃれな、美しい女性

またしても女性の話で恐縮なのだが、美しい人が、オフィスにいるので、その人の話をさせて頂きたい。ホント美しいので。

その人は、僕がそこで働き始めた去年の10月から目を引いた。

まず、背が高い。170くらいあるんじゃないかと思う。まぁ僕は人の身長を目で測る才能が無いので実際はもしかしたらそんなに高くないかもしれないが、日本人一般女性の平均よりもずっと高いのは事実だ。

そして、おしゃれだ。痩身を強調させるようなピッタリ系の服を好んでいて、それを姿勢よく着こなしているから、モデルのようでもある。そうだ、モデルのよう、という形容がピッタリな気がする。色は大体、緑、黒、白がそれぞれ3割で、残りは黄色と青。ちなみに、僕は赤と青の服を着ることが多い。

最後に、顔だ。整形でもしたんじゃないか、というくらい整っている。目は若干細めで、肌がきれいな小顔だ。ただ、美人は冷たい、とよく言われるが、彼女もその例に漏れない。とっつきにくそうだな、なんか人を見下してそうだな、という雰囲気も出している。特にスタスタと歩いているときに。

そんな彼女が歩く姿を、僕の近くの通路を眺めているだけで終わればいいのだが、神様はそうしてくれなかった。ちょっといろいろ起きてどうしようかと思っている。

まず前提を話しておくと、うちのオフィスの1フロアはサッカーコートを縦横5メートル短くしたくらいという広大な場所で、僕は角の辺りのドアの近くに座っている。サッカーコートでいうと、僕は左サイドバックのところにいるという感じだ。彼女はというと、左ウィングのあたりにいる。縦長の辺の向こう側だ。

フロアにドアがあるのは、僕の付近の左サイドバックと、対角線上にある右ウィングだけなので、左ウィングの彼女がトイレやエレベーターに行くときはそのどちらかまで歩かなければならない。普通に考えて、縦長の方の左サイドバックに来るより右ウィングに行く方が近いのだが、なぜか彼女はサイドバックに戻るという、クリスチアーノ・ロナウドはしないようなことを選んでいる。それは謎だ。

そのおかげで、僕は仕事中に楽しみができてるし、こんな事も起きた。

ある日、僕の近くのドアが壊れた。ドアを開けるのにそれなりに力が必要になり、閉じると閉じたときの「ガシャン」の音がやたら大きく鳴るようになるという、かなりめんどくさい状態になった。

僕のようなドアの近くのデスクにいる人にとってはうるさくてイライラするので、何度か自分で直そうとしてみたが、なかなか直りそうにない。そうしていると、マネージャーさんが総務部に連絡してくれた。

それから時間が経ち、まだドアが直っていない中、僕はトイレに行き、用を済ましてデスクに戻ろうとした。そのとき、ドアで、かの背の高いおしゃれな美しい女性が、ドアを開けられずに必死に押しているではないか。あとちょっとで開きそうなのだが、引っかかってうまく開かない。

背の高くない、おしゃれでもない普通の女性がその様子を後ろからじーっと見てドアが開くのを待っている。その人の存在もわかっているのか、冷たいと思われた美人がものすごく慌てている。

こ、これは、チャンスではないか。

1秒、いや0.5秒でそう判断した僕は、手前の美しくない女性を小走りで抜き去ってドアに駆け寄り、ぐっと力を出してドアを一緒に開けた。これが初めての共同作業かな、と思う余裕はそのときは無かった。

反対側に回り込み、ドアノブを持ったまま、どうぞ、と手で促した。美人の彼女も同じようなことをして後ろにいた女性を先に行かせたので、僕との距離が近い。

そうしたら彼女は、下を向いてこう言うではないか。

「ちから持ちなんですね」

な、なんて優しい声なんだろうか。なんて優しい感謝の示し方なのだろうか。冷たさのかけらもない、温かい笑顔だった。

僕は必死に返事を探したが、「いえいえ」と超小さい声で言うのが精いっぱいで、それから彼女はスタスタと自分のデスクの方に戻っていった。

そのとき、初めて間近に彼女の顔を見たのだが、本当に綺麗な肌をしていて、笑顔が超かわいい。美人なのに。なんでこんなオタクばかりの会社にいるのだろう、という感想を改めて持ったのだった。

この日のことをきっかけに、僕と彼女は互いに意識するようになった。と思う。たぶん。

僕の目の前にはおしゃべりなアメリカ人翻訳者が座っていて、暇なときは彼とよく雑談するのだが、僕がたまたま彼に話しかけたときに彼女が通路を通ると、彼女は急に顔をうつむき始め、僕は急に緊張して英語が全くしゃべれなくなる、ということがよく起きる。

彼女がトイレに行った少しあと、僕もたまたまトイレに行き、トイレから出てきた彼女と鉢合って、なんだか微妙な空気になった、ということもあった。僕は軽く頭を下げたのだが、彼女は驚いた様子で、どうしたものか、という感じでスルーしていった。

極めつけは昨日の金曜日だ。

仕事帰りにフットサルをする予定があった僕は、シューズやシャツといった用具を一式持ってきていた。

そしてランチタイム、いつも通り1キロほど歩いてうどんの店へ入り、食べて外に出たのだが、雨が降り始めているではないか。

まずいな、折り畳み傘持ってないな、と思いつつも歩き始めると、だんだんと雨が強くなり、雷まで鳴りはじめた。ゲリラ豪雨というやつだ。

多少雨宿りをしたものの止みそうな様子はなく、昼休みの時間も残り少しだけだったので、僕はひたすら豪雨の中走り続け、全身ずぶ濡れになりながらオフィスに戻り、目の前のアメリカ人翻訳者を始めとした周りの人に「プールでも入ってきたの?」と笑われた。

不幸中の幸いというか、うちはオフィス内の服装に決まりが一切無いので、びちょびちょの全身をフットサルの服装に丸々着替えることができた。日本代表のユニフォーム、黒のハーフパンツ、オレンジのソックス、そしてフットサルシューズだ。トイレで着替えて再び翻訳者に「おれのサインいる?」と言って笑いを取ったが、すれ違う人全員に二度見されることとなってかなり恥ずかしい思いをした。

そんな恥ずかしさが快感に変わり始めた頃、僕がすくっと立ち上がって翻訳者と仕事の話を始めた瞬間、例の背の高いおしゃれな美しい女性が通路を通ったことに気づいた。そしてそっちの方を見たら、目が合った。

その途端、彼女は僕の反対側を向き、必死に笑いをこらえるようにするではないか。こんな彼女は見たことがない。なんでだ? と思ったが、理由は当然だ。僕が日本代表だからだ。

あーやべ、この状態で廊下ですれ違ったら、サイン求められるかもしれない、写真お願いします、ってなるかもしれない。ツーショットで、って感じで。まぁ最低でも話しかけてくれるだろう、と思った僕は、妙に尿意を感じ始めた。やばい、トイレ行かなきゃ、彼女がトイレからちょうど出てくるタイミングでトイレに行かなきゃ、と思い始めるが、翻訳者と仕事の話が中々終わらない。かといって会話を早く終わらせることもできない。失礼だし。

やっとひと段落つき、席を立とうとしたところで、ドアが開いて、彼女が出てきてしまった。遅かったな、と悔しがったが、ドアの方を見ると、彼女は依然として笑いをこらえているではないか。こっちの方を見はしなかったが、目じりが下がって口角が上がっているのを手で隠そうとしているのがよく分かった。

日本代表の僕を二度見して変な目で見てくる人は大勢いたが、笑ったのは僕のデスクの周りの人と彼女くらいだ。なぜか。それは、彼女が僕を「知っている人」というカテゴリーに入れているからだろう。

「知らない人」がオフィスで日本代表のユニフォームを着ていたら、そりゃ笑わないが、「知っている人」が着ていたら、笑ってしまう。そういうものだろう。そういうことで、彼女にとって僕は後者のポジション以上の存在なのだ。

と、いうことは、である。チャンスが来たら話しかけたって良いんじゃね? 自然なんじゃね? 何て話しかけていいかなんて全然わからないけど。おれのサインいる? かな。

そういうわけで、またドア壊れないかなー、ゲリラ豪雨来ないかなー、と思う、僕の日常なのでした。