madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

人に話しかけられる2015年

今年になって、もう一月も終わりだ。

今年になって、もう3回も人に声をかけられた。

これってなかなかの数字だと思っている。

1回目、中国か台湾人の父娘に、東新宿で話しかけられた。

「あー、あー、エクスキューズミー、あ、スイマセン」

そう言って、信号で待っていた僕に地図を持って近付いてきた。

「ハイ」僕は快くうなずいたけど、「あー、あー」と、お父さんはうまく聞きたいことを聞けない感じ。メガネをかけた小さい女の子は、後ろに隠れている。

最初にExcuse meと聞いてきたので、英語が出来ると思い、「You can ask me in English」と言ったら、「い、いんぐりっしゅ?」と慌てて娘さんの方を向き、じゃあこの子が、と言うかのように、背後にいた子を僕の前に引っ張ってきた。でも、女の子もうまく喋れない感じ。でも、恥ずかしそうにしている感じがなんだかかわいい。

お父さんは、「あー、あー、こ、ホテル」と、地図にグリグリと何重丸もの印があるところを指差した。見ると、何だかものすごく近い。ぱっと目線を上げて見えた信号機に書いてある「新宿七丁目」という字と、グリグリ印の一番近くにある文字が一致しているから、あ、すぐここらへんなんだな、とわかった。

ホテルの名を探すようにキョロキョロしながら少し歩き出す。心配そうな表情を変えない父娘はついてこない。

あ、とつい声を出してしまいながら、父娘の言っていたホテルの名前とその入口を見つけたので、僕は嬉しそうに父娘に手を振った。だが、二人は気付かずに地図に目を近づけている。

少し近付いて「I found it」と言ったけど、まだ気付かないようなので、指を差したら、やっと笑顔を見せ、女の子が先に「Thank you」ときれいな発音で白い歯を見せてくれた。お父さんも、「さ、さんきゅー」と嬉しそうに言ってくれた。それに対し僕が「Enjoy!」と笑顔で言ったら、女の子が再び素敵に笑ってくれた。

あの子、将来絶対かわいくなるな。

さて、2回目。とある日曜日の午後2時頃、新宿で友だちを待っていたら、いや、いつも通りSB君なんだけど、「すいません」という声がかかってきた。

新宿東口のアルタ前の広場で話しかける人なんて、居酒屋の人? と一瞬だけ警戒したけど、なんてことのない、普通の青年二人だった。おそらく30歳周辺だと思う。一人は背の低くて真面目そうな人で、もう一人は面長で目の細い、背の高い人だった。素振りが大人っぽく、東京が初めてのようには見えなかったけど、こんなことを聞くくらいだから、おそらく観光客なのだろう、と僕は決め付ける。

「ハイ」と驚きながら応えると、「すいません、ここら辺で、大きな本屋とかってありますかね?」と丁寧に聞いてきたので、再び驚いた。新宿で本屋?

「あ」と僕は必死に頭を働かせる。「ちょっと、調べてみますね」と言って、手元にあるiPad miniでインターネットのブラウザを開き、「新宿 本屋」で検索した。

検索になぜか時間がかかり、すごく気まずくなったように感じた。二人もそう思ったのか、「なんか、すいませんね」と背の低い方の人が謝った。

「いやいや、友だちを待っているんで、ちょうどいい時間つぶしですよ」と僕は言う。

「時間、大丈夫なんですか?」と今度は背の高い方が聞く。

「あー、はい。あいついっつも遅れるんで」

「あ、いっつも遅れるんですか」と二人は笑った。

検索がようやく終わったものの、あまりよく詳細が載っていないため、検索ページから該当のページを開いた。そして、再び読み込みに時間がかかる。

「えーと、ここに来たのは……」読み込み時間中、僕は言葉を探しながら聞いてみた。新宿で知らない人に本屋の在り処を聞くなんて、いくらなんでも謎すぎるからだ。

「あ、普段は大体上野ばっかりなんですよ」と、背の低い方が、僕の意図を汲み取ったのか、応えてくれた。が、さらに謎が深まった。上野ばっかりだから、新宿のことがわからなくて、それで、知らない人に本屋の場所を聞くの? そんなことを思いつつ、「あー、そうですよね」と僕はわかったようにうなずく。

視線を落とすと、新宿にも案外本屋が数ヶ所あるようだ。大体は西口の方だが、東口にも1つあることがわかった。でも、その詳細の地図を見るために、さらに調べる必要がある。僕は本屋の名前をコピーして、検索バーに貼り付けた。

少し沈黙ができたあと、背の低い方が「ここら辺に住んでいるんですか?」と僕に質問した。

「いや、ここはあんまり来ないですけど、東新宿の方で働いているので」と僕は答える。

ひがししんじゅく? と二人は顔を見合わせて首を傾げた。それを見て僕が「歌舞伎町を越えたあたりですかね」と説明する。

「あぁ、あの、スクウェアエニックスとかシティバンクが入っている、大きなビルのある辺りですか?」と背の低い方が思いついたように言い、僕はつい笑ってしまう。

「そうですね。あそこで働いていますね」

「えー!」と二人は驚く。「あのビルの設計、ウチの会社がやったんですよ」と背の低い方が語る。「それで、僕も一回だけ行ったことがあって」

僕も偶然に驚きながら、「あの、窓がデコボコになってるじゃないですか。あのおかげでめっちゃあったかいんですよね」と言うと、背の高い方が、「おー、よかったじゃん」と低い方を肘で小突いた。

「あ、わかりました」僕はページのロードが終わったので、手を少し挙げて言った。「西口には、あの小田急本店の7階に、おっきな本屋がありますね」

おだきゅう? と二人は再び顔を見合わせて首を傾げる。

「あぁ、あの白い」とビルが並んでいるところを指差した。Odakyuの文字が大きく見える。

「あーはいはい、おだきゅう」背の高い方が言うと、なんだか片言のように聞こえて笑ってしまう。あのビルは設計してないんですか? と聞こうとしたが、少しふざけすぎなのでやめた。

「で、東口の方は、このアルタ前の道を通っていくと……」

二人の首がみたび傾く。困ったリスのような顔をいい年の男性がすると、中々おもしろい。「じゃあ、僕も一緒に行きますよ」と僕は提案した。

「あ、いいんですか?」と二人は喜ぶ。そんなに本屋に行きたいのだろうか。

「友だちはいいんですか?」と背の低い方が尋ねる。「いや、まぁ、どうせまだ来ないっすよ」と僕が答えると、二人はあはは、と笑った。

歩行者天国になっているようで、三人で並んで歩き始めた。知らない人とこうして歩くのは何だか不思議な気分だった。

「じゃあ、今は上野に住んでいるんですか?」と僕が尋ねてみる。

「いや、上野は仕事だけですね」背の低い方が答えた。

「僕、近く住んでるんですよー」僕は会話を広げようとする。

「え? どこですか?」

「日暮里のあたり、ですかね」

「うわ、めっちゃ近いじゃないですか」

僕はiPad miniの地図を見ながら、本屋はもうすぐだな、と思う。

すると、背の低い方が続けて、「実は、僕、町屋に住んでたんですよね」と背の低い方が話を続けた。僕はぶっ、と吹き出してしまう。

「いや、実は、今僕が住んでいるの、町屋ですね。ほら、町屋って言ってもわからないと思って」と僕が言うと、二人は、会ってから一番驚いた表情をした。「えー!」という声も出てこない。正直僕も、偶然の重なり合わせが多すぎて、驚きが止まらなかった。

そんな雰囲気の中前を見たら、本屋の縦長看板があるビルが見えたので、「あ、あれですよ」と指を差した。「あの、○○書店って書いてある」と僕が二人に言うと、「あ、ありがとうございます!」「本当にありがとうございます、わざわざ」とお礼を言ってくれた。

それからほんの1秒ほど、間があった。どうする? どうすべき? という疑問を3人がまさに同時に持っている。

気まずくなった僕は、とっさに、「じゃあ、よい一日をお過ごしください」と笑顔で言い、ごきげんよーと言わんばかりに颯爽に去った。2人は、これまた驚いたような表情で、僕の背中を見送った。あたかも、「あれ? 連絡先交換したりしないの? それで、この縁ですから、飲んだりしましょうよ?」と言いたいかのように。

でも、僕はすたすたと去った。なぜなら……いや、わからない。ただ、なんとなく、めんどくさかったのかもしれない。あるいは、SB君が待っているような気がしたかもしれない。

案の定iPad miniを見たら、「どこ?」とメッセージが来ていた。新宿東口へ向かう。

少し会話を交わし、あらかじめ決めていたお昼ごはんの場所に向かいながら、今起きたことを話してみた。

「なんでスマートフォンを持ってないんだ?」と聞き終えたSB君は一番最初に言った。「30代あたりで、今話題のスマホを持ってなくて、そこで検索せずに他人に本屋への道を聞くなんて、おかしくね?」

確かに! ちょうど僕がiPad miniで検索をしたように、彼らも検索できたのでは? スマートフォンを持っていないなんて、少し不自然である。

そして、最後の場面については「あの二人はお前のストーカーで、親密になりたかったんじゃねーの」と言った。「偶然を装ったんだよ」と適当な口調でも言った。そんなアホな。

「でも、かわいい女の子だったら、確実に連絡先を聞いてたね」と僕はそれに対して応える。

「じゃあ、その手法でナンパしてみたら?」SB君はすかさずそう提案した。「本屋どこですか? ならそんな不審に思わないだろ」

うわ、それ、めっちゃ良いかも。今度機会があったら、是非やろう。SB君も一緒にやれば、きっとうまくいくんじゃないか。

「言っておくけど、おれはやらないからな」だが、SB君には先回りされて、断られてしまった。

そして、最後に、3番目。これは今日起こった。

Jリーグアルビレックス新潟のユニフォーム姿で皇居の周りを走り終わって、寒さのあまり急いで、その上にウィンドブレーカーを上下着た。そうしたらいつの間にか、目の前に男の人が立っていた。

「あのー」と、細い目をさらに細めてスマイルを作り、僕におそるおそる話しかける。

「ハイ」と僕は驚きつつ、快活に返事をした。

「私、テレビ局の者なんですけど、最近の皇居のランニングについてお話をお聞きしてもよろしいですか?」

テレビ局と言うにしては、近くにカメラは見当たらない。ランナーから話を聞いて、それをニュースにするのかなぁ、とやんわりと思った僕は、「いいですよ」とこれまた元気に答えた。走った後の機嫌は、いつだって良い。

「最近、皇居を走っているときに、何か思うことはありますか?」と男性は質問をした。少し考えたけど、僕は普通の答えしか浮かばなかった。

「いや、まぁ、皆さん思っているんでしょうけど、やっぱり、歩いている旅行客さんと、走っている人が、ぶつかっちゃいそうになっちゃうなぁ、っていうのはいつも感じますね」

あぁーそうなんですかぁー、と深刻そうに男性が頭をうなずかせる。

「やっぱりこう、間を縫っていかなくちゃいけなくって、特に信号があるところは、団体さんがこう、壁みたいになってですね、全然進めないときもあるんですよね」

ジェスチャーも交えて僕はペラペラと話し続ける。走った後の機嫌はいつだって良い。

「全然、おそらく皆さんが思っている普通のことですけどね」僕は、こんなのテレビで言う必要ないですよー、という雰囲気をかもし出そうとする。

「あ、でもですね、そういうのって、走っていない僕たちからしたら、全然知らないことなんですよね」と僕をおだてるように言う。「よろしければ、カメラの前で今のこと、話していただけますか?」

えっ、と僕は驚いた。カメラで撮るのかい。

腰を低くし、手を伸ばして僕を誘導した先には、カメラを持ったカメラマンさんと、いわゆるディレクターっぽい服装をしたディレクターっぽい人が立っていた。

僕はウィンドウブレイカーを脱いで、アルビレックス新潟のユニフォーム姿になった。「これで良いですかね?」と男性に聞くと、「おまかせします」と笑って答えてくれた。僕の愛する地元のクラブの良い宣伝になるといいな、と僕は願う。

だけど、実際のカメラを見ると、僕はなんだか緊張してきた。

それを感じたのか、僕に話しかけた男性が「さっき言っていただいたことを話していただくだけでいいので」とアドバイスしてもらったので、少し力が抜ける。

立ち位置を調整した後、カメラを肩に担いだカメラマンさんがレンズを僕に向け「回しました」と合図を出した。男性が、いつの間にか用意していたピンク色のマイクを僕に向ける。どこに目を向ければいいのかな、と迷ったあと、とりあえず恥ずかしいのでレンズからは視線を背け、インタビューワーとなったさきほどの男性の方を向いた。

「では、年齢から伺ってよろしいですか?」

早速、さっき聞かれていないことを聞かれた。さっきのアドバイスは本当にただの励ましだったんじゃないか、と少し裏切られた気分になる。

「20代です」と僕は答える。

「お仕事は? あ、学生さんですか?」

「いや、会社員です」

「どういったお仕事を……」

そこまでプライベートなことを答えなきゃいけないのか、と再び裏切られた気持ちになる。全くその質問の準備をしていなかった僕は、あまり口が動かないものの、なんとかごまかしながら、適当に答えた。

そして、「ではですね、最近、皇居を走っていて何か感じることはありますか?」と本題の質問が来た。

再び緊張が来るものの、あくまで冷静に、先ほど言ったことと似たようなことを話した。それから、「ランナーさんは歩行者さんを快く思っていないですし、歩行者さんも、ランナーさんを快く思っていないんですよねぇ。物理的にも、精神的にも、歩行者とランナーがぶつかっているんですよ」と、言った後に、あ、オレ今うまいこと言ったな、と自分で自分をほめた。

それに関して少し突っ込んだ質問があり、答えた後、「海外の人が多くなったと感じますか」という質問が来た。

その質問も、さっきはしてこなかったじゃないか、と思える余裕はもう無く、「そうですねー、多くはなりましたね」と必死に答えると、ひとつピカーンと、とあるエピソードを思い出し、そのことをインタビューアーに向かって言った。

「でも、前、たぶんアメリカ人の女性だと思いますけど、走っているときに目が合って、『Good job!!』って言ってくれたんですよねぇ」

すると、インタビュアーも、後ろにいるディレクターも、少し笑顔を見せた。おぉ、オレ、何かをつかんだぞ、と思うと、インタビューアーさんが、「あ、じゃあ楽しいこともあるんですね」と言ってくれた。

そろそろこれで終わりかな、と思ったら、インタビューワーの後ろにいるディレクターさんがなぜか口を開き、「最近、気になるニュースとかありますか?」と、完全に流れから逸れたことを聞いてきた。えっ、とうろたえながら、必死に頭の中を検索し、「Jリーグの2シーズン制が始まることですかね」と話した。「人気が落ちちゃって、これで人気が上がるのかどうか、すごく興味があります」答えてすぐ、なんでJリーグを選んだんだよ、と自分で自分に尋ねる。

すでに頭の中がいっぱいいっぱいだった僕に、再びディレクターが後ろから「どうして気になんですか?」と質問をかぶせてきたので、慌ててしまう。

「いやー、この2シーズン制で、人気が上がってくれるのか、どう変わっていくかが、気になりますね」と、さっき言ったことの言い換えを単に言ってしまったことに気付いた僕は、「この、アルビレックスに優勝の可能性があるかどうか、とかも、気になる理由ですね」と胸のエンブレムを指差しながら付け加えた。

「どのチームですか?」と今度はインタビューワーが質問をし、「新潟です。アルビレックス新潟」と答えた。

インタビューワーとディレクターは目を合わせ、今の聞いたの、失敗でしたねといった表情をして、僕の方を向き、「では、以上になります。ありがとうございました」とお礼の言葉を言ってくれた。

「ちなみにですね、これ、来週火曜日TOKYO MXの朝の番組で放送されますので」と情報も伝えてくれる。あぁ、東京のローカルテレビだったのか、じゃあ新潟の話はミスだったな、と反省したものの、「放送されます」と断定口調だったので「あ、本当ですか!」と僕は喜んだ。「絶対録画します!」と言ったけど、「いや、見ます」と言い換えた。

朝の7時から、ということも教えてもらい、僕もお礼の言葉を言って、その場を離れた。

正直、カメラを向けられるのは初めてだったため、今までに味わったことのない緊張をした。でも、堂々と答えたつもりだ。火曜日、僕のことをテレビで見たどこかのかわいい子が、「かっこいい!」とか思って、新宿で友だちを待っている僕に、「ここら辺に本屋さんってありますか?」とナンパしてくる日が来ることを、僕は切に願う。彼女の前住んでいた場所が、僕の今住んでいる場所である偶然があることも願う。もしかしたら、その子は、あの「Thank you」って言ってくれた中国人の女の子になるのかも? めっちゃ先の話だけど。

 

まぁ、そういう汚いことを期待していると、突然パタリと話しかけられなくなるんですよね。知っています。