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madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

お金と視力

MacBook Airが超欲しい。欲しくてたまらない。ここ1年くらいずーっと欲しがっている。

今使っているラップトップは2009年モデルで、重くて持ち歩くのはちょっと大変、っていうか恥ずかしい。画面も大きいわけではなく、そもそもなんだか飽きてきた。

でも、そこでマックブックエアーを買えば、喫茶店に持って行って作業し、「うわ、Macbook Air使っている俺ってかっけー!」とか思いながら、今頑張っているプログラミングの勉強もより一層はかどるんではないか、このブログの更新頻度も週一から週二くらいに増えるのではないか、とか妄想を膨らませている。

でも、「ちょっと待てよ」と、脳の奥底から指令が来て、妄想を邪魔してくる奴らがいた。「お前には金がないぞ」と、現実的な問題を突きつけながら。

やってきたのは、常に現実的な考えを持ち続ける、脳の奥底に常駐し続けている現実党のやつらだ。数は多くないが、しぶとさに関しては他を圧倒する。

そんな現実党に対し、もはや脳内の80%ほどの勢力となった妄想党が、「いやいや、新しくてかっこいいMacBook Airを買ったら、古いラップトップでゲームやら無駄なネットサーフィンやらで消費している時間が、プログラムをせっせと学んだりして、打ちやすいキーボードを駆使した、クリエイティブで未来につながる優雅な時間へと丸々変わるのだぞ! ここはリスクを犯すときだ! 『今お金が無いから』と短い目で見るのではなく、長い目で見て、先行投資をするべきなのだ!」と脳内の至る所で街頭演説をしている。

ここで現実党は、あくまで冷静に、「とりあえず、通帳を記入して、今どのくらい金あるか見て来ては?」と妄想党に提案した。断る理由のない与党は、外に出て銀行、郵便局のATMにそれぞれ行くことにした。

まずは銀行。通帳をブイーンと入れると、おねえさんの声と一緒にブイーンと返ってきた。こちらは、予想通り残高15万円ほど。この数字はこの3ヶ月ほど一切増えも減りもしていない、横ばいなのだ。給料で入ってくるお金と家賃や生活費で出て行く金が同じくらいのこの口座から、MacBook Airの9,10万円を全て引き出す度胸は、さすがの妄想党にもない。

だが、ここで肩を落とす妄想党ではないのだ。もう一つのサブ通帳、郵便局の口座には、少なくとも7,8万ほどはあるはずだ。そしてこちらは、クレジットカードの引き落としに使っているのみのはずだ。さらに、そのクレジットカードの使用は、1ヶ月に5000円を超えるのも稀なほど、使用回数は少ない。

ATMの部屋に入り、通帳をガチャコンと入れると、テケテンテケテンという音と共にガチャコンと戻ってくる。

パッと開いて見ると、23000の文字が最終行にあった。

あれ?

妄想党は慌てた。こんなはずではないはずだ。なぜ、なぜこんなに減っている。クレジットカードの使い具合は頻繁にチェックしているため、こんな数字になっていることはありえないのだ。

冷静になって、通帳をよく見てみてください、と現実党の党員たちは表情だけで言ってくる。

妄想党はその小さな文字をよく見てみた。

メニコンメルスプラン 4752」

コンタクトレンズの月額使用料だ。そうだ。1日使い捨てのレンズを使っている僕は、これを毎月払うことで、いくらでもレンズを使う事ができるのである。

が、問題は値段だ。こんなに高かったっけ? 毎月ほぼ5千円じゃん。1年で6万円じゃん。もう5年くらい使っているから、コンタクトレンズだけで30万も払っているの? 妄想党員たちの表情が曇る。

ドン、と現実党党首は演説台を叩いた。場所は脳内臨時国会だ。

「長い目で見るとおっしゃっていましたが」党首はあくまでも冷静で、表情に豊かさがない。「通帳の文字を見るのが精一杯のあなた方の近視では、遠く向こうにある綺麗な景色の輪郭もはっきり見えないのでは?」

妄想党の総裁を含めた全党員が、目を合わせるのを嫌って下を向く。

そこを、現実党党首が、追い討ちをかけるように続ける。「前ばかりを見るのではなく、周りも見てみたらどうですか? あなたの近視でも見えるでしょう、すぐ身近にある価値のあるものたちが」

妄想党は、視線を下から、横に移した。右を見ると、iPad miniがあり、Bluetooth対応外付けキーボードがあり、左を見ると、スピーカーやテレビなどがある。

iPad miniとキーボードを持ち運べば、喫茶店だろうがどこだろうが、ある程度作業は出来ます。今のラップトップをPCに出力すれば、ある程度綺麗な画質を楽しめるでしょう。私たちは十分、『かっこいいもの』に囲まれているわけです。コンタクトレンズをちゃんとつけて、しっかりと見て、その存在に感謝してください。新しいものが欲しいだけの子どもっぽさを、卒業してはどうですか?」

妄想党は再び下を向いた。そして、だんだん勢力が少なくなっているのが目に見えた。現実党は勝利を確信するも、あくまで表情は変えず、涼しい冷静さを保っている。

妄想党総裁はすくっと立ち上がり、現実党の演説台と向かいに配置されている演説台に向かって静かに歩いた。

「これは、しょうがないですね」

総裁は苦虫を噛み締めたように、苦しそうだ。それを見て現実党は愉快になるが、表情には出しまいと、こらえている。

「これはもう、お父さんとお母さんに頼んで、お金を借りるしかないですね」

現実党の表情に、初めてヒビが入った。眉間にしわがギュッと入り、口周りの筋肉が一気に緊張した。

「てめーら話聞いてなかったのかー!」

こらえていた感情を抑えきれなくなった現実党は、妄想党が位置する席へ殴り合いのケンカを吹っかけ、収集がつかなくなりましたとさ。

 

さて、どうしよう……。