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madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

友人のSB

ソフトバンクではありません。友だちの名前のイニシャルです。

昨日、秋葉原に行ってきました。

屋台の100円の石焼芋を3個買ってお昼にし、ゲームセンターでグルーヴコースターというゲームを一緒に楽しみました。

そこまでは良かったんですが、ゲームをやり終えた後、階段で降りようとすると、SB君が、「ここって、電車男の舞台になったビルじゃね?」と言いました。僕は嫌な予感がします。

「屋上行くぞ」

提案ではないのです。付いて来いという命令なのです。

階段をずんずんと登り始めます。階段の踊り場の壁には、訴えかけるように「階段やエレベーターで屋上へは行けません」という貼紙がしてあります。

しかし、SB君は日本語があんまり読めないので、気にせずに登り進みます。

ゲームが置いてある階が終わると、STAFF ROOMと書いてあるドアが見えました。どう考えたってこれ以上行けません。しかし、SB君は英語がわかるにも関わらず、気にせず登り進みます。

怖くなった僕は付いて行くのをやめました。そっと歩みを止め、ゲームが置いてある階まで戻り、食べ残しの焼き芋を食べます。何人か少年が、そんな僕の姿を見てみぬふりして、階段を降りていきました。

顔を出して外の景色を見ると、なかなか良い眺めです。確かに、ドラマの電車男も、こんな上から見た景色が映ってたっけなぁ、となつかしみながら記憶を探します。僕も、エルメスたんのような彼女が出来たら、夜ここに連れて来て大人のキスでもしようかなぁ、とか思いました。あれ? でもキスしてたのって屋上だったっけ?

すると、「ワッ」と、静かに階段を降りてきたSB君が僕を驚かしました。僕は焼き芋を歩道に落としそうになります。

「屋上、行けた?」と聞くと、「焼き芋食べ終えた?」と聞いてきました。会話が成り立ちません。ですが、表情を見るに無理だったようです。

じゃあどこへ行こうか、と考え始めると、SB君は、「隣のビルなら行けるはず」と言って、隣のビルに向かいました。

勘弁してくれよ、と思いますが、これで無理なら諦めてくれるかな、と希望を持ちつつ、僕も向かいます。

ビルのエレベーターに着きました。階の案内を見ると、ビルは7階建てのようですが、お店は5階までしか入っていません。

これはもう諦めるしかないな、と僕は思いました。ですが、5階に入っているのがガンシューティング場であることを見るやいなや、僕は「これはおもしろそうだ!」とワクワクしました。ガンシューティングなんてやったことがない僕は、「行こう行こう」とSB君に提案します。SB君は何も言わずに「↑」ボタンを押してエレベーターが来るのを待っています。その間、僕は「やったー、SB君の突飛な考えのおかげで、何か新しいことを経験できそうだなー」とかのん気なことを考えていました。

エレベーターが1階に到着し、中にいた人と入れ替わりで中に入ります。背後を見ましたが、乗るのは僕たち2人だけのようでした。

ドアが閉まります。そしてその直後、SB君が押したのは「7」のボタンでした。

「えっ?」と僕は驚きます。「なんで7階押したの? ガンシューティングは5階だけど?」

「オレを信じろ」とSB君は言います。同じ質問をしても、同じ答えです。

でも、考えて見れば、7階に店が入っていないということは、通常のマンションのエレベーターのように、7階に着いたらすぐ近くに非常階段があるのかもしれません。また、店が入っていないということは、人がいる可能性も低いです。そういうSB君の発想も同じだったのでしょうか、それゆえの「オレを信じろ」なのでしょうか。

7階に着きました。

目の前に、木の模様の綺麗な壁が広がっています。「これ違う、これ違うよ」と僕は焦り、エレベーターから出ようとしません。SB君は一歩エレベーターから出て、右向き、左向き、もう一度右を向くと、ガッカリした様子は特には見せず「なんだ、人が住むところか」と言い捨てて、「5」ボタンを押しました。

ふーっ、これで一段落だな、と安心して5階に着きます。

5階に着くと、早速バン、バンといった銃声が聞こえます。広くはありませんでしたが、すぐ見た感じだと、3つほど透明な窓で仕切られた長細い部屋があります。

待機場所には3人ほど観光客がいて、「銃はレンタルできる?」「できるよ」「無料?」「いや、払わなきゃだめ」といった会話を、店員さんなのか客なのかよくわからない男の人としているのが聞こえます。

観光客は値段が高くなりそうだと判断したのか、「じゃあ帰るか」と合図をし、僕たちとすれ違いました。

その会話を聞いていた僕たちも、射撃場に近付いてよく見てみると、使っているのはエアガンで、紙の的をパスンパスン打っているだけであることに気付き、SB君も「なんだ、BB弾かよ」と足元に転がっているBB弾を蹴り飛ばしています。

先ほど観光客と話していた男性は射撃部屋に入り、待機場所にいるのは僕らだけになりました。店員さんはおろか、受付のような場所も無いため、諦めよう、とSB君に目で合図を送って、エレベーターに向かいます。

先ほどの観光客3人がまだエレベーターを待っていました。それほど広いエレベーターではないため、あぁ混みそうだなぁ、とふんわりと思います。

その直後、急にSB君が僕の目の前で左を向き、取っ手を左にガラッと動かしました。非常階段が現れました。

えっ、と声を出す暇もありません。左に引かれた扉の黄色い貼紙には、読むまでもなく立入禁止といった旨が書かれています。ここに扉があったのかよ、まだ諦めてなかったのかよ、人が来たらどうするんだよ、いや、単純に混雑したエレベーターが嫌だから、階段を使いたいだけなのか?

僕の期待も虚しく、SB君は下ではなく上に歩を進めました。「ちょっと!」と声を押し殺して叫びますが、耳には届きません。僕の後ろで、「あ、エレベーター来ないから僕たちも階段を使おっか?」と観光客が平和に話し合っているのが聞こえます。

観念した僕はドアを閉め、SB君の後ろに付いていきました。踊り場にはタバコの吸い殻や椅子などが投げ捨ててあり、スタッフの休憩場のように見えます。スタッフが来たらどうしよう、と考える僕は、SB君の何百倍も心配性なんでしょう。

屋上に着きました。先に着いたSB君はきょろきょろと首を回しています。

僕はつい笑ってしまいました。なんと、四方とも看板や壁に囲まれて、外の景色がまるで見えないのです。テレビに出ていた、電車男が休憩を隠れ場所として使っていた屋上とはまるで違います。ボイラーのブーンという音が虚しく鳴っています。

「行こう」と僕は必死にSB君に伝えます。「ここじゃないって」

「どこか抜け道があるはずだ」とSB君はあたりを歩き回っています。本当に、諦めの悪い男です。

「行こう、何も見えないよ」と僕は再び下り階段を指差しました。僕としては気が気でなりません。

SB君はとうとう断念したようで、何も言わずに階段の方にやって来ました。「早く行こう、早く」とSB君を先に行かせます。

さっき見た踊り場の椅子のところに誰かがいるのではないか、とビクビクしましたが、誰にも会わずに5階に着きました。

「扉を開けて、誰かいたらどうしよう」と再びビクビクしますが、何の迷いも無く、SB君はガラッと扉を開けます。

どうやら、待機場所には誰もいないようです。

よかった、誰もいない、と安心するわけもなく、まだビクビクしている僕は、扉を閉めようとしますが、扉が重いため、うまく閉める事ができません。

閉めている間に誰か来たらどうしよう、と思って一旦扉から離れてエレベーターに向かおうとしますが、いや、それはダメだと思い直し、思いっきり力を出して右に引っ張り、ガラッ! と扉を閉めました。

すぐにエレベーターの前にいるSB君の所に行き、ほーっ、やっと一息つける、と安心しました。ですが、一息呼吸をする前に、エレベーターの向かいにあるドアがドン、と開いて、がっしりした大柄な男性が現れました。ランボーのような見た目で、ランボーのように銃を携えてます。

僕は顔が引きつります。ですが、男性は僕を見て、頭をぺこりと下げて会釈をしました。どうやら店員さんのようで、僕を客と認識したようです。それから、僕がたったさっき閉めた扉を、ガラッと力みもせず開け、非常階段に出て行きました。

僕はSB君の目を見ました。「ふん」とでも鼻で笑ってきそうな顔をしています。

ちょうどエレベーターが到着しました。中に入ってSB君が「1」ボタンを押します。

ウィーンと下がり始めた瞬間、「ちょっと! あと1秒でランボーに殺されるところだったんだけど!」とSB君に向かって叫びました。

SB君はぴくりとも表情を動かさず、「時には、リスクを犯さなくてはいけないんだよ」と諭すように言います。今日、SB君と僕は一度も会話らしい会話をしていない気がします。呆れた僕は何も言いませんでした。

ビルの外に出て、駅の方向に歩き始めました。そして、SB君が口を開きます。「どこか、超高いビルの屋上行ってみようぜ」

まだまだ諦めないSB君に「あのさぁ」と僕は反論します。「さっきのはたまたまギリギリセーフだったけど、次は本当にランボーに殺されちゃうよ?」

何も言わないSB君に「高いところに登りたがるのは、バカと煙だけだよ」と言うと、「は? なんだそれ」と怒ってきたので、「カラオケ行こ! カラオケ!」と僕は話を変えました。

それから僕たちは、カラオケを数時間楽しみ、ヨドバシカメラで買い物をし、ご飯を食べて、無事に一日を終えましたとさ、めでたしめでたし。

そんなSB君にいつも振り回されっぱなしですが、半年後には日本を去ってしまうことを想像すると、やはり悲しいものですね。彼がいなくなってしまう前に、一回くらい、煙にでもなってやろうかな、と思いました。