madajimaとの会話

たまたまここを訪れてくれた方を一笑い吹かせるために、赤の他人との「どうでもいい会話」や自分の「どうでもいい思考」を載せています。

madajimaの海外 香港編 その6 - 酒店

「酒店」とは、中国語でホテルのことです。

なんで「酒」と「店」をかけ合わせて「ホテル」になるのか、という中国語の謎は置いておいて、ここでは、僕が泊まった五つ星ホテル「Marco Porlo Hotel Gateway」のサービスについて書いていきます。

 

香港編はトピックごとに書いているので時系列はちょっと分かりづらいですが、1日目の夜に時間を戻しましょう。

夜景を楽しみ、辺りをブラブラして1日目が終わって寝ると、朝の5時に目が覚めてしまいました。

香港と日本の時差はプラス1時間なので、現在の日本時間は6時です。

日本で、僕はいつも6時に起きるので、まさしく体内時計通りに僕は起きた訳です。

自分の体ってすげえな、習慣ってすげえな、と感嘆しました。

 

オフィスに行くまでに4時間もあり、また、朝食も6時半からです。

暇です。何もやることがありません。

と、いうことで、外に散歩に行くことにしました。

朝食場と同じ階の部屋なので、エレベーターに行く時に、朝食を準備している「カチャコチャ」という音が聞こえてきました。

ああ、こんな時間から働いているんだなあ、と、 感嘆しました。

それから外に出て、まだ暗くて静かな街を30分ほどブラブラしました。

人混みも夜景もそこにはなく、香港の別の顔を見た気がしました。

そうしてホテルに帰ってきて、エレベーターを上がり、朝食場の前を通って部屋に戻ると、ドアノブに袋がぶら下がっているのが分かりました。

頑丈そうな布の袋です。

え? 何? と驚き、おそるおそる中身を見てみました。

中に入っていたのは、日本経済新聞でした。

いやいやいや。

いいよ、いいよ。

普通、朝食のところとか、受付にドサって置いてあるだけでしょ。

「無料です。取っていってください」みたいな。

それくらいで良いんだよ。

ほら、朝食の準備で色々忙しいんだろうからさ。

それくらいの自由感がちょうど良いんだよ。

わざわざ部屋に届けてくれたら、読まなきゃいけない気がしてくるじゃん。

読みたい気持ちとか読める時間があるとか関係なく、プレッシャーを感じちゃうじゃん。

日本人の会社員だからって、日本経済新聞を絶対に読むとは限らないから。

・・・いや、違うのか?

もしかしたら、逆か? 逆なのか?

もしかして、「読んでおけよ」ってことなのか?

「日本で大事件があったから、読んでおいた方がいいぞ」っていうメッセージなのか?

「今日だけは、本当に読まなきゃ後悔するぞ」っていう意味なのか?

僕はいそいそと部屋に入って、靴を脱ぎ、ベッドの上に新聞を広げました。

「日本でもHuawei製機器の使用中止」みたいなことがデカデカと書かれていました。

・・・ああ。

アメリカと中国の貿易戦争の象徴的な、あれ関連ね。

まあ、確かに大きなニュースかな。

でも・・・。

わざわざ届けてくれるほどではないかな・・・。

僕は、複雑な気持ちになりました。

 

朝食を食べる前にシャワーを浴びようと思いました。

ここには、シャワールームみたいな、透明なガラスに囲まれた、床が1m四方くらいの縦長の直方体の小部屋と、普通の細長いバスタブが分かれています。

勝手がよくわかりませんが、きっとシャワーと風呂は別々にやれってことなんでしょう。

まあ、朝はシャワーだけ浴びたいので、それで大丈夫です。

そのシャワールームの中には、壁についているパイプに、色々なレバーやら突起やらがありました。

色々なことができそうですが、やりたいのはシャワーだけなので、いかんせん困ってしまいます。

説明も何も無いので、探り探りにやってみて、「シャワーを浴びる」の目標を達成するしかありません。

昨晩もシャワーを浴びましたが、その時にどうしたかを忘れてしまいました。

そこで、とあるレバーを上にして、お湯を出そうとしてみました。

すると、真上から水が僕の頭に降ってきました。

「うおっ!」とつい声を出してしまいました。

なんと、水が天井から出てきたのです。

シャワーヘッドの真ん前に立つと、頭上に四角い穴があるのですが、そこから水が出てきました。

昨晩、たまたまレバーを下にして、たまたまシャワーヘッドからお湯が出ていたため、その穴は換気扇だと思っていました。

実は、換気扇ではなく、水が出てくる場所だったのです。

残留水の水の冷たさと、天井から水が出てくるダブルのショックでした。

天井からシャワーなんて、天と地がひっくり返されたかのように、常識を覆されました。

 

そんな感じで、最初こそビックリしてしまいましたが、慣れてしまえば楽ちんでした。

頭を前に垂らす必要がないので、良い姿勢を保ったまま頭を洗うことができます。

非常に心地いいです。

こいつは革命的だと思いました。

是非とも家に欲しい。

日本に持って帰りたい。

トイレにウォッシュレットを取りつけるみたいに、天井シャワーも天井に取りつけられるようになれば良いのに。

天井が低くなる代わりに、天井からシャワーが出てくる、みたいな。

もし将来家を買う、となった時は、これをプライオリティにしたくなりました。

ウォッシュレットなんかいらないので。

とはいえ、ここまでシャワーがすごいのに、部屋のトイレにウォッシュレットはついていません。

便座も温かくなりません。

ぶっちゃけ、これもこれで困りました。

夜、寝る前にトイレに座った時に「ひゃっ!」と便器の冷たさに驚いて、眠気が飛んでしまうからです。

結局は、無いものねだりなんでしょう。

天井シャワーかウォッシュレットか、その答えは後で出すことにしました。

 

そして、朝ごはんに行きました。

自分の部屋があるのと同じ14階の朝食会場です。

6時半きっかりに行ったので、僕だけです。

ですが、4人がけのテーブルが5、6個あるくらいようなかなり狭い場所なので、ホテルの宿泊者が全員来るような場所ではないのでしょう。

ここで、チェックインの時の説明を思い出しました。

この朝食会場は、「ビジネスラウンジ」と呼ばれているのです。

余計にお金を出した人しか味わえない、「ビジネスクラスの朝食」となる訳です。

席に適当に座ろうとすると、「グッモーニン、サー」と、目の細い中国系のおっちゃんが笑顔で挨拶してきました。

自分の両手で握手をするようにして、ゴシゴシしています。

黒い制服を着ているのもあり、よく漫画やゲームとかで出てくるような、中国人商人の見た目そのものです。

ここが漢方薬の店とかなら、確実に値段とか副作用とかを警戒していたでしょう。

今にも「コノ薬ヨク効クアルヨ」とか言って、危ない薬を売ってきそうです。

症状が治り過ぎて、逆に病気になってしまう薬を買わされそうです。

が、ここはホテルの朝食です。

値段にも副作用にも心配する必要はありません。

「卵料理はいりますか?」

ほら、卵です。薬とかじゃあありません。

「そうですね、それじゃ、お願いします」

「どの卵料理にしますか。スクランブルとか、目玉焼きとか・・・」

スクランブルで」

「わかりました。コーヒーはどうでしょう」

「そうですね。カプチーノありますか?」

「ありますよ」

「それで」

「わかりました、サー」

おっちゃんは、これ以上ないほどニンマリしました。

こういうホテルの勝手がよくわからないこんな若者にも、終始笑顔で受け答えをしてくれました。

それがありがたく思いつつも、やはり笑顔に裏があるんじゃないかと不安になってしまいます。

漫画やゲームによる「イメージ」の影響は計り知れないな、と思いました。

 

バイキング形式の朝食をたんまりと食べ、部屋に戻りました。

朝食で結構脂っぽいのを食べてしまったのもあり、喉がやたら乾きました。

一日目の時にも少し触れましたが、チェックインしてから部屋に入った時に、部屋の中には500mlのミネラルウォーターが3本ありました。

化粧台に1本、ベッドの側に1本、机の上に1本。

オフィスを出る前に、僕はそれらを全部飲んでしまいました。

夕方から朝にかけて、1.5リットルの水を飲んだ訳です。

自分の飲みっぷりに驚きましたが、しょうがありません。

もしかしたら今日は足りなくなってしまうかもしれないので、会社からの帰りに、ペットボトルの水でも買おうかな、と思いました。

 

それから、仕事が終わり、ホテルに戻ってきました。

もちろん、というか、やっぱり、というか、「会社帰りにペットボトルの水でも買おうかな」なんて思っていたことは、綺麗サッパリ忘れていました。

ホテルのエレベーターに乗っている時に、そのことをハッと思い出しました。

ですが、手遅れではありません。

ペットボトル3本は毎日補充されているはずなので、まずそれを飲もう、と思いました。

そして、部屋の鍵を開け、靴を脱ぎ、補充されているペットボトルを探しました。

すると、たまげてしまいました。

なんと、ペットボトルが5本に増えていたのです。

化粧台に2本、ベッドの側に2本、机の上に1本。

3本だったのが、5本に増えました。

ペットボトルが全部空になっているのを見て、「あ、この人はいっぱい飲む人なんだ」と思い、増やしたのでしょうか。

「そうか、1.5リットルじゃ足りないのか」

「それじゃあ、2.5リットルにしてあげようか」

そんな風に考えてくれているのだとしたら、とんでもありません。

嬉しいです。

このサービス、嬉しいです。

また、驚くべきは、ペットボトルだけではありませんでした。

バスルームの中にある化粧台です。

それなりに適当に置いていた、持参のひげ剃りや目薬、コンタクトレンズケースが、全て几帳面に整って置かれていたからです。

僕の私物が全部、等間隔に、美しいほどに整えられていました。

ただのひげ剃りや目薬そのものが、美しく見えてしまうほどでした。

こんなの、ビビります。

「え? そこまでする?」っていうレベルです。

「こりゃあ、仕事頑張らないとな」なんて、やる気すら湧いてきました。

 

そんな風に感動しながら、意気揚々に外に行き、近くの中華料理屋に行きました。

香港では担々麺が有名な気がするので、担々麺を食べました。

そして、食べ終わると、腹をくだしてしまいました。

正直、担々麺はミスってしまいました。

空っぽになっていた胃の中に脂っぽい担々麺を流し込むのは、賢い選択ではありませんでした。

意気揚々に中華料理屋に向かったのとは対照的に、お腹を抱えるようにしてホテルに戻りました。

そして、水をひたすら飲みました。

脂っこいのを食べて喉が渇いていたのもありましたし、下痢でどんどん水が出ていったので、失った水分をどんどんと補う必要がありました。

そのおかげもあってか、眠る頃には、ちゃんと眠れるくらいに回復しました。

ちゃんと眠って、8時間眠ることができて、朝になると腹痛もなくなっていました。

ただ、眠っている間に汗をかいたので、起きてからすぐに水をゴクゴク飲みました。

結果として、部屋のミネラルウォーター5本を全部飲み干してしまいました。

2.5リットルです。

状況がなんであれ、一晩で2.5リットルの水を飲んだ訳です。

ホテルの清掃係になんて思われるだろう、と想像してしまいました。

それと同時に、前日に、ペットボトルを3本から5本に増やしてくれたことに感謝しました。

そうしてくれていなかったら、8時間ぐっすり眠る事もできず、このお腹もすぐに治らなかったかもしれません。

このサービス、万歳です。

 

その日も仕事が終わり、ホテルに向かいました。

オフィスから戻ってくる途中、少しソワソワとしました。

「もしかしたら、ペットボトル、5本から7本に増えているかな」と考え始めたのです。

はは、いや、まさか。

5本でも十分多いのに、7本なんて。

一晩で2.5リットルもおかしいのに、3.5リットルなんて、モンスターです。

そんなに水を用意するなんて、動物園みたいです。

でも、数字上は、3、5、と来たら、次は7です。

2本増えたのですから、次も2本増えるのが自然です。

数学者にこの話をしたら、「数学的に考えて、次は7でしょう」と胸を張って予想するはずです。

ホテルのエレベーターに乗り込んで、だんだんと部屋に近付いてきました。

果たして、7本に増えているのだろうか。

3、5、7、と増えるのだろうか。

エレベーターを降り、部屋まで歩き、カードキーで鍵を開け、ドアノブを引き、靴を脱ぎました。

すぐに、バスルームの化粧台、そしてベッドの側を見ました。

そして、笑ってしまいました。

7本、置いてありました。

化粧台に3本、ベッドの側に2本、机の上に2本。

増えていました。

綺麗に2本、増えていました。

誰が飲むんだよ、3.5リットルなんて。

俺はカバかよ。

いや、そんなことは、清掃係の人も考えたかもしれません。

「まさか、5本全部飲むとは・・・」

「こいつ、やりよる」

「俺の期待をいつも超えてくるな」

「前世はカバか」

そんな風に思ったかもしれません。

なんだか、このミネラルウォーターのペットボトルを通して、清掃係と会話をしているような気分になりました。

どこの誰だか、外見は想像すらできませんが、きっと良い人なのだろう、と思いました。

なんせ、ペットボトルを出血大サービスしてくれる人です。

また、僕の私物を美しく置いてくれる人です。

美しい心の持ち主であることは、間違いないでしょう。

 

ちなみに、そんな美しい心の持ち主ともっと会話をするために、7本全部飲もうと思いましたが、さすがにそれは無理でした。

以降、飲んだ本数に関わらず、7本が毎日準備されました。

 

僕は、そこまで多くのホテルに行ったことがないので想像するしかありませんが、普通は、「ペットボトルは一部屋何本」みたいに、本数を決めているのが普通だと思います。

シンプルで、効率的なので。

部屋掃除なんて、時間的にも人的にもただの「コスト」なので、手っ取り早くパッパと済ませることが最優先でしょう。

ですが、ここのペットボトルのルールは、「もし空になっていたら増やしましょう」みたいになっているようです。

「お客様の気持ちを考えてください。水を飲みたいのに無かったら、大変でしょう」みたいに教育しているようです。

あるいは、もしかしたら、そんなルールなんて無いのかもしれません。

ただの、この清掃係の機転かもしれません。

一人一人のおもてなしの心なのかもしれません。

 

なんにせよ、ここでは、「この部屋の人がどういう人か」を考えてサービスをしてくれているのだ、と気付きました。

「そうか、この人は水をいっぱい飲むんだ。じゃあミネラルウォーターを増やさなきゃ」

「3本でも足りなかった、5本でも足りなかった、じゃあ次は7本だな」

水だけではありません。新聞もそうです。

「この人は日本人だから、日本の新聞を用意しなきゃ」

「日本の新聞があるなんて思っていないだろうから、部屋に届けてあげよう」

そういうことかもしれません。

こんな、今まで泊まったビジネスホテルに無いような、機械的にするのではない、人間の暖かみを感じるサービスに、嬉しくなってしまいました。

朝食のおっちゃんの、「卵料理はいかがでしょうか?」「コーヒーはどうでしょう?」のニンマリ笑顔や手のゴシゴシも、疑うのではなく、暖かみとして捉えよう、と思いました。

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バスタブ、シャワールーム、ウォッシュレットの無いトイレ

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ビジネスラウンジの朝食。納豆や寿司があるのは俺(日本人)のため??

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